〈担当記者座談会 08年を振り返る-下-〉 対米、日 |
キーワードは同時行動の原則 頻繁な朝米協議
A 今年の朝米関係は、昨年採択された10.3合意が期限どおり履行されなかった事実を確認する作業から始まった。10.3合意では、朝鮮は核申告書提出と核施設無力化を、5者は政治経済的補償を昨年内に終えることになっていた。 B 年始の時点で、合意どおり進んでいたのは核施設の無力化作業のみだった。しかしこれさえも5者による補償が大幅に遅れ、朝鮮は同時行動の原則に従って速度を調整した。 A 核申告書の提出問題は、昨年11月にその内容を米国に通告。しかし、米国はウラン濃縮やシリアとの核協力が含まれるべきだと主張し、対立が続いた。 C 妥結点を見いだすため、昨年に続き今年も朝米の直接協議が年始から活発だった。3月のジュネーブ会談、4月のシンガポール会談を経てついに6月、朝鮮は核申告書を提出し、同時に米国は朝鮮を「テロ支援国」リストから削除する作業に着手することを発表した。 A しかしこれも一筋縄ではいかなかった。米国はまたも10.3合意にはない申告書に対する検証問題を持ち出し、8月11日に「テロ支援国家」削除の効力発効を一方的に延期させた。 B 朝鮮はこれに反発し、核施設無力化作業を即時中断させ、施設の原状復旧に着手した。米国は10月初め、慌ててヒル国務次官補を平壌に送った。 C 米国は、全世界の前で一度は爆破(6月)された寧辺核施設の冷却塔がまた聳え立つ事態を恐れたのだろう。目に見える形で米国の政策の失敗をさらけ出すことになるからだ。結局米国は、平壌会談から1週間後、約束どおり朝鮮を「テロ支援国」リストから削除した。 B 紆余曲折はあったものの、「テロ支援国」リスト削除は、朝米関係改善へ向けた歴史的な第一歩だと言える。 A とはいえ、10.3履行の展望は見えていない。重油100万トンに相当するエネルギー提供は今だになされておらず、朝鮮は同時行動の原則に従って無能力化の速度を調整している。年末に6者会談団長会談が開かれたが、10.3履行のタイムテーブルは示されなかった。 B 結局、9.19共同声明の第2段階は、オバマ政権に持ち越されることになった。 C 6者会談の前途は多難だ。明確に言えることは、日本の反対を押し切って米国が「テロ支援国」リストから削除した事実に象徴されるように、米、日、南の同盟国に亀裂が生じていることだ。6者の進展を望まない日本と南朝鮮はエネルギー提供の義務を拒否、遅延させるなど、合意履行を急ぐ米国の足かせとなっている。 A 今までの6者会談の過程を振り返るとその構図は、朝鮮が義務を先に果たして履行を躊躇する他国の行動を促してきたということだ。朝鮮は同時行動の原則を徹底的に貫いた。今後6者会談の進展のキーワードは同時行動と言えるだろう。 悪化一途の朝・日 A 一方、朝・日関係は悪化の一途をたどった。2度の朝・日政府間実務会談(6、8月)が行なわれたが、合意は履行されなかった。 B 6月の会談で朝鮮側は「拉致問題」の再調査を、日本側は朝鮮に対する制裁の部分解除などを約束した。会談は米国の「テロ支援国」リスト削除に向けた動きが表面化した時期に行われ、朝・日間でも関係改善をはかれる良い機会だったと思う。 C しかし「拉致問題」を口実に朝鮮への圧力を主張する勢力によって、会談の結果は朝鮮に対する反感を呼び起こすことに利用された。 このような状況を打開するため8月にも会談が開かれたが、それから3週間あまりで福田首相は突然辞意を表明。日本の政局は混乱に陥った。そして朝鮮は静観の構えをとった。 B 麻生首相は執権後、8月の瀋陽での会談合意を継承するとは言ったが、実際には履行するどころか、10月に期限が切れる対朝鮮制裁の6カ月の再延長を発表した。 A 6者会談においても、日本は朝鮮との対決姿勢を強めた。 B 結局、日本は多国間の共通の目標実現を妨害しただけだ。 朝鮮は、日本を6者会談参加国と認めず相手にしないとの公式立場を明らかにするまでに至った。 C 在日朝鮮人の視点からすると、今年は総連と在日同胞に対する弾圧で年が明けた。1月21、22の両日、京都府警は京都府商工会と三丹商工会、総連三丹支部など15カ所に対する強制捜索を行ない、活動家を逮捕した。 B 容疑は同商工会とは何ら関係のない「税理士法違反」というものだった。年末にも同様の口実で新宿商工会を強制捜索した。そして、その上部組織という理由だけで在日本朝鮮商工連合会と東京都商工会にまで捜索の手を伸ばした。 A 警視庁公安部外事2課が係わったことからも、政治弾圧以外の何ものでもないということは明らかだ。 C 対朝鮮「制裁」は実質的には総連と在日同胞に向けられている。北南海外の同胞団体や日本の市民団体からは、総連と在日同胞に数多くの連帯のメッセージが寄せられた。 A 日本の政局の不安定とともに、朝・日関係改善のきざしはまったく見えていない。よりいっそう悪らつに敢行されるだろう日本当局の弾圧行為に対しては、断固として闘っていくべきだ。(姜イルク記者) (関連記事) [朝鮮新報 2008.12.25] |