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〈検証 オバマ外交 新政権の対朝鮮政策-下-〉 非核化の課題、同時行動が原則

カギは米国の核脅威除去

 オバマ政権が発足したが、朝鮮半島核問題を解決するための6者会談プロセスは現在、こう着状態にある。ブッシュ政権最後の6者団長会談(昨年12月)では、朝鮮側の「核計画検証問題」をめぐる対立によって非核化第2段階の期限を確定できないまま終了した。

解決か現状維持か

朝米関係に対する双方の最近の発言

  朝鮮(外務省スポークスマン、1月13日の談話、17日の答弁) 米国(ヒラリー・クリントン国務長官、1月13日、上院外交委員会の聴聞会)

核問題

・米国の対朝鮮敵視政策と核の脅威の根源的な清算なしには、100年経っても核兵器を先に手放すことはない
・全朝鮮半島の非核化は徹底的に検証可能な方法で実現、非核化の最終段階に至って朝鮮半島全体に対する検証が同時に行われるべき
・「行動対行動」の原則を堅持
・タフで直接的な外交を通じて、北朝鮮の核兵器プログラムを完全かつ検証可能な形で除去する
・プルトニウム生産、ウラン濃縮、核拡散について充分な説明を求める
・義務を履行しない場合は新たな制裁措置を講じる

関係正常化

・非核化を通じた関係正常化ではなく、関係正常化を通じた非核化 ・朝鮮側が核兵器開発を検証可能な方法で除去しない限り不可能

 発足直後ということで、オバマ政権の対朝鮮政策はまだ明確に示されていない。現在は内部検討作業の真っ最中で、具体的な政策が発表されるのはもう少し先になると見られている。

 新政権の対朝鮮政策を展望するにあたって、いくつか注目すべき点がある。

 まず、同時行動の原則に基づく非核化と朝米関係正常化といった、問題の根本的な解決を目指すのか、あるいは朝鮮の核保有を事実上容認する現状維持路線をとるのか、という点だ。

 政権高官の発言や公開済みの文書などから、オバマ政権が第2期ブッシュ政権後半の対話路線を基本的に引き継ぐのは確実だと思われる。

 しかし、同政権が朝鮮半島非核化と朝米関係正常化に向けて積極的に取り組むのかどうかは不透明だ。問題解決のためには朝米の同時行動原則を実践しなければならない。米国の対朝鮮政策が「根本的」に変わらなければ、朝鮮が核兵器を放棄することはなく、非核化も実現しない。

 オバマ政権は「タフで直接的な外交」を通じて、「北朝鮮の核兵器プログラムを完全かつ検証可能な形で除去する」という表現で核問題に対する政策方針を説明している。クリントン国務長官も、「北朝鮮が核兵器開発を検証可能な方法で除去しない限り関係正常化は不可能」だと述べた。

 また、「(朝鮮側が)義務を履行しない場合は新たな制裁措置を講じる」可能性にも言及した(1月13日、上院外交委員会の聴聞会)。

 これらの立場表明は朝鮮側の行動を要求するだけで、自らの政策転換には触れていない。自国の核脅威の問題に踏み込まなければ、朝鮮側に核放棄を決断させることは不可能だ。

 6者会談という多国間外交と朝米直接対話をどうリンクさせるかという点も注目される。

 ブッシュ政権時代も6者会談の枠組みを基本にした朝米対話は行われてきた。朝鮮の核実験後は、朝米2国間協議の内容を6者の枠の中で追認するという形がより鮮明になった。

 クリントン国務長官をはじめとする関係者は「6者会談の有用性」を指摘する一方で、特使派遣、高位級対話を含めた直接外交の必要性も強調している。

 オバマ政権が前政権の政策を全面的に踏襲するなら、協議の枠組みに大きな変化はない。しかし、直接対話をより重視する方向にシフトすれば、劇的な進展もありうると見る向きもある。

 また、どのような議題を協議再開の糸口にするかという問題も注目点だ。

 前回の6者団長会談は検証問題をめぐる対立で成果なく終わった。協議の再開にあたって、検証問題から入るのか、あるいは他のアジェンダを設定するのか。朝鮮側が主張しているように、検証問題を同時行動原則に基づいて扱うのならば、米軍が駐留する南朝鮮での検証方法など軍事に深く関わる議論が不可避だ。問題の根本解決に向けた米国の意志を示さなければならない。

 一方の朝鮮側も今年に入って、核問題や朝米関係についての立場を明らかにしている。

 1月13日の外務省スポークスマン談話は、自主権尊重と関係正常化を通じた非核化について強調、「行動対行動」原則の貫徹を主張した。また、「朝鮮半島の非核化は検証可能な方法で実現されるべき」だと指摘、米国側にも検証受け入れを求めた。

 核廃棄の条件に関しては、「米国の核の脅威が除去され南朝鮮に対する核の傘がなくなる時」と、踏み込んだ発言を行っている。

歴代政権の教訓

 オバマ政権発足後に想定される朝米間の課題は今日になって突然浮上したわけではない。米国の核の脅威、例えば「南朝鮮に対する核の傘」の問題を挙げることができる。

 1991年9月、当時のブッシュ大統領は、空母に搭載された核兵器の撤去と地上配備の戦術核の全廃、平時における艦艇と航空機への戦術核搭載中止を発表した。同年12月には、盧泰愚大統領が南朝鮮における「核不在宣言」を公式に発表した。

 9.19共同声明も、米国が「朝鮮半島に自国の核兵器がなく、核あるいは通常兵器で朝鮮を攻撃する意思がないことを確言した」とある。宣言のレベルにとどまっていた非核化の意思を米国が検証を含めた実質的な行動を通じて証明することは不可能ではない。

 93〜94年の第1次核危機、朝米基本合意などを経た民主党クリントン政権末期の2000年、朝米両国は関係正常化の一歩手前まで歩みを進めた。10月、国防委員会の趙明禄第1副委員長が特使としてホワイトハウスを訪問、クリントン大統領と会談した。直後に発表された朝米共同コミュニケは両国関係を根本的に改善する措置を講じることをうたった。

 背景には、90年代半ば以降の情勢変化に対応する米国の対朝鮮政策の見直し作業があった。99年、ウィリアム・ペリー対朝鮮政策調整官(元国防長官)が発表した報告書(ペリー報告書)は、対朝鮮政策において朝鮮側の一方的な屈服を要求するのではなく、朝米間相互の脅威縮小の必要性を認識したものだった。当時のクリントン政権は、「米国が望む姿の北朝鮮ではなく、あるがままの北朝鮮に対処しなければならない」という認識に基づき、朝鮮との関係改善を包括的かつ段階的に進めていくと宣言した。

6者プロセス再開

 オバマ政権周辺では朝米直接対話による問題解決を求める声が高まっている。

 米上院軍事委員会のカール・レビン委員長は1月30日、核問題に対する前政権のアプローチを批判し、新政権が「北朝鮮との2国間対話を再開すべき」だと主張した。自由アジア放送(RFA)によると同氏は「ブッシュ政権が2国間対話を中断したのは、米国の目標が北朝鮮の核の除去にあるという点で建設的ではなかった」と批判。さらには、「適切な状況の下で直接対話を再開させる」必要性を強調、「新政権もこのような方向に進むだろう」との見通しを示した。

 6者会談プロセスも新たな展開を見せている。ロシアが議長国を務める東北アジア平和安保体制に関する作業部会が今月中にモスクワで開かれる予定だ。

 また、スティーブン・ボスワース元駐南朝鮮大使、モートン・アブラモウィッツ元国務次官補をはじめとする米国の朝鮮問題専門家グループが3日から朝鮮を訪問した。

 経済危機など対処すべき懸案が山積しているオバマ政権にとって、外交上の難題をこれ以上増やさないためにも、朝鮮半島核問題で現実的かつ迅速な対応策を講じる必要がある。政策決定に生かすべきは歴代政権の教訓であり、9.19共同声明に明記された同時行動原則の遵守だ。(李相英記者)

〈検証 オバマ外交 新政権の対朝鮮政策-上-〉 直接対話、特使派遣にも言及

[朝鮮新報 2009.2.4]