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過去回帰の冷戦式対応 対決煽る「米韓共同ビジョン」

 【平壌発=金志永記者】16日(現地時間)、ワシントンで行われた米「韓」首脳会談は朝鮮の自衛的核抑止力強化路線にもう一つの根拠を与える結果となった。会談で採択された「米韓同盟のための共同ビジョン」(以下、「共同ビジョン」)は、朝鮮半島と周辺地域の対立の構図を1950年代の朝鮮戦争の延長線上でとらえ、米国の南朝鮮に対する核抑止力の提供を既成事実化した。

非核化の放棄

「米韓共同ビジョン」の採択に反対するデモを展開する市民団体メンバーら(16日) [写真=統一ニュース]

 緊張が高まる現在の朝鮮半島情勢が示しているのは、20世紀末の冷戦終結は大国間に限ったものであり、朝鮮半島では冷戦がいまだに終わっていないという事実だ。朝鮮の人工衛星打ち上げ以来、米国は朝鮮に対する敵意と拒否感を露骨に表している。核をめぐる朝米対決は再び激化の様相を呈している。

 今回の会談は、両者が朝鮮半島の核問題を生んだ冷戦構造を解消する意思がないということを明らかにした。

 会談で採択された「共同ビジョン」は、米「韓」相互防衛条約を「過去50余年以上の間、朝鮮半島と東北アジアにおける平和と安定を保障してきた米韓安保関係の礎石」と意義づけ、今後も南朝鮮の防衛態勢維持のために「核の傘を含む拡大抑止を米国が公約する」ことを明文化した。

 また米国は、「朝鮮半島と域内およびその他の地域に駐屯する軍事力」として南朝鮮の防衛を支援すると確言した。

 これは、朝米対決がエスカレートしている中で、米国と南朝鮮の首脳が朝鮮半島で核戦争を遂行するための体制を万全に整えるという認識を共有したことにほかならない。

 今回のワシントン会談では核問題に関する米国の二重基準が露見した。オバマ大統領は朝鮮が核抑止力を強化せざるをえない強硬姿勢を「共同ビジョン」に示しておきながら、会談終了後の会見では「今日この場で私は朝鮮半島の非核化を宣言する」と述べた。

 朝鮮は、自国の核保有が自ら願ったものではなく米国の敵視政策と核の脅威に対処する不可避な選択だったと主張してきた。ワシントン会談の数日前には、「ここにきて核放棄など絶対にありえないことであり、われわれの核兵器保有を誰が認めるかどうかなど関係ない」(6月13日、外務省声明)という立場を表明した。

 米国は今回、朝鮮側の論理を追認するかのごとく、朝鮮に対する核威嚇政策を再び公式化した。オバマ大統領は会見で朝鮮を「核保有国として認めることはできない」と語ったが、そのような物言いは交戦関係にある相手方には通用せず、むしろ米国が本音では朝鮮半島の非核化を放棄したという印象を与えるだろう。

危機感の現れ

 オバマ大統領の論理は、自国が核兵器で他国を威嚇することには免罪符を与え、「非核化」を朝鮮の一方的な核武装解除として規定することでのみ成立するものだ。

 会見では「対話」と「交渉」についても言及されたが、もつれた現在の朝米関係をどのように解決していくかについての方法は提示されなかった。

 反面、「懲罰」の論理が前面に押し出された。李明博大統領は「北が60数年前に韓国の領土を侵犯し戦争を起こした」と断定し、今日も続く「北の脅威」に「韓国は強力に対応する準備ができている」と豪語した。そして「強力な韓米共助体制を見て、北は戦争をむやみに起こすことができないと確信している」と述べた。

 また、ゲーツ国防長官との会談でも「間違った行動に対しては相応の代価がともなうということを(朝鮮が)認識できるよう、原則に立脚したアプローチが必要だ」と強調した。

 李大統領のこのような対応は、国連を舞台にした制裁騒動の渦中に表面化した。朝鮮は当然、国際社会の関心が集まる首脳会談の場で発せられた好戦的な発言を重く受け止めている。

 対南政策の関係者は国内で危機に陥った李政権が安保問題を政権維持の手段にしていると見ている。関心をそらすために軍事的な冒険を起こす可能性も指摘している。

 軍部も、今後起こりうる武力衝突の責任を北側に転嫁するために南の執権層と軍部が安保不安をあおっていると見ている。北側の「武力挑発」説をことさら強調する李政権が朝鮮西海上で一触即発の緊張を醸成しているとの指摘だ。

合意の否定

 国連制裁を宣戦布告と見なした朝鮮は「停戦協定が拘束力を失った」とし、「戦時に相応した措置」を取っていく立場をすでに明らかにしている。一方、今回の米国と南朝鮮の「同盟強化」宣言は対決をあおることに重点を置いた内容となっている。

 朝鮮はオバマ政権について、「これまでの政権と少しも変わらない」と断じたが、今回採択された「共同ビジョン」は過去に交わされた朝米合意の精神を公然と否定するものだ。

 「共同ビジョン」は「自由民主主義と市場経済の原則に立脚した平和統一」を目指すことをうたった。これは、北南首脳対面によってもたらされた朝鮮半島の環境変化を前提に、根本的な関係改善措置を講じることを宣言した朝米共同コミュニケ(2000年10月)とは根本的に異なる。

 6.15共同宣言による変化とは、「わが民族同士」の理念に基づく連邦、連合制による統一の志向だ。一方、オバマ大統領が「共同ビジョン」で描いた未来は、朝鮮の主権を否定している。さらには、「失われた10年」をうんぬんしながら対決時代への回帰を狙った李明博政権に歩調を合わす内容になっている。歴史の針を過去に戻す、このような冷戦式の対応が朝鮮半島で戦争を再び引き起こさないという保証はない。

 朝鮮は、こんにちの対決の本質を「自主権と尊厳に関する問題」と見ており、「人民が選択した思想と制度を破壊しようとする行為」(外務省声明)については徹底抗戦を誓っている。

南朝鮮の市民団体らが非難 「朝鮮半島の平和、安定に逆行」

[朝鮮新報 2009.6.24]