整った環境 クリントン訪朝
対朝鮮政策、「選挙結果に左右されぬ」
米大統領選挙投票日の7日、労働新聞は「朝米関係問題に対するわれわれの原則的立場」と題する署名論評(別項)を発表。先月発表された朝米共同コミュニケが、「朝鮮と米国が関係改善の立場を確言した歴史的な外交文献」であり、「国際法的効力を持つ」と強調するとともに、朝米関係の発展のために誠意ある努力を尽くすことを表明した。一方、米国は、大統領選挙の最中と言うこともあって、クリントン大統領の訪朝を示唆しながらも、関係改善に向けた具体的な行動を起こしていない。しかし、選挙結果にかかわらず、多少のタイム・ラグ(時間差)はあっても、朝米関係が改善に向かって進むことは間違いないだろう。
逸したタイミング これについて、10月22日付のニューヨーク・タイムズ紙は、政府官僚の話を引用しながら、オルブライト長官の任務は、クリントン大統領が朝鮮を訪問すべきでないとする理由のないことを示すことにあると報じていた。また、通常ならば数カ月かかる訪問準備を、趙明禄特使の訪米からわずか10日も経たない内に決定したことは、クリントン大統領が退任前に朝米関係を改善しようとする米行政府の希望を表したものだと同紙は指摘している。 さらにオルブライト長官の訪朝についてホワイトハウスのシーワート報道官は、朝鮮側と「全面的で徹底した論議」を行ったと発表(10月25日)し、オルブライト長官自身も「進展があった」(同)と語っている。つまり、クリントン大統領が訪朝してはならない理由は、まったく無かったということだ。 ところが、クリントン政権の「予想」に反して、米国の一部のマスコミが、朝鮮に対して安易に譲歩(訪朝)すべきではないとの論陣を張りはじめた。おりしも米大統領選挙は、大詰めを迎えており、民主、共和両党候補が伯仲したたたかいを繰り広げていた。「いたずらに世論を刺激するのはまずい」との判断が、クリントン政権内で働いたと思われる。そしてクリントン大統領は、訪朝を発表するタイミングを逸したというわけだ。 一部には、クアラルンプールでの朝米ミサイル会談が難航したからという説もあるが、米国務省のバウチャー報道官が3日のブリーフィングで、「所期の目的を達成した」と明らかにし、米側首席代表のアインホーン国務省次官補が、解決されるべき重要な問題があり、それら会談の内容を「ワシントンに報告して次の段階を検討するだろう」と述べていることなどから推察すると、ミサイル問題の解決もやはり、ワシントン=クリントン大統領の決断待ちと言えるだろう。 8日現在、米大統領選挙の結果はまだ確定されていないが、ブッシュ共和党候補が当選しても、米国の対朝鮮政策の大枠は変わらない、というのが一般的な見方だ。その根拠は、労働新聞も指摘しているように朝米共同コミュニケが法的効力を持ち、同時に朝米関係改善が、米国の国益にも合致している点にある。 問題は、クリントン大統領が退任前に訪朝するかどうかだが、その可能性は十分にある、と言うよりも非常に高い。 とくにクリントン大統領が「歴史に残る大統領」になるために残された道は、中東和平がこう着状態に陥っている現状で、朝鮮との敵対関係に終止符を打ち、関係改善をはかることしかないと思われる。 また、ブッシュ前大統領が92年の大統領選挙でクリントン候補に敗れた後にソマリアへの派兵を決定した前例もあり、クリントン大統領が訪朝を取り止めるいかなる理由も見当たらないのだ。 クリントン大統領の訪朝は、名実ともに朝米の新しい関係を開く歴史的出来事になる。その環境は整った。「名誉ある大統領」になれるかどうかは、クリントン大統領の決心次第だと言えよう。(元英哲記者) |