ウリ民族の風習、伝統/遊戯
コクトゥカクシノリ(操り人形劇遊び)
当代社会を痛烈に風刺
昔から春になると、少年、少女たちが広々とした野や山の中で、自分たちの好みにあった草や木で作った人形を用いて遊ぶ習慣がある。
草の細い葉を編んだ髪の毛にリボンをつけたり、巻き上げたり、布切れでチマやチョゴリを着せて作った人形を操って遊ぶ。これを「コクトゥカクシノリ(操り人形劇遊び)」という。
「コクトゥ」は、操り人形とか傀儡(カイライ)、すなわち偶人という意味で、「カクシ」は若い女性が出る人形劇」という意味である。
また、一方では、登場人物の名をとって「パクチョムジク(朴僉知劇)」、「ホンチョムジクック(洪僉知劇)」などと呼んだ。「チョムジ」とは、李朝時代の官職で「僉知中枢府事」の略称であり、この官職が年老いた人の閑職(今風にいえば「窓ぎわ族」)であったことから、年配の男性をあざけって姓の下につけて呼んだという。
この人形劇遊びは、草人形のほかに塀風、敷き・掛け布団、枕などを作る際に余った布で作った人形で、李朝時代の支配者を徹底的に揶揄(やゆ)した。
内容は、夫と妻と妾(めかけ)の三角関係を描いたものであるが、主には封建時代のリャンバン(両班)とその追従者である僧侶の間に若い女が入ってきて、2人が女を横恋慕したり、取り合いをする筋書きである。それに民衆が痛烈な批判を向けるとともに、徹底的に皮肉り、リャンバンに対する日頃のうっぷんをはらした。
その意味で、人形劇やタルクック(仮面劇)を演ずる人は、常々迫害を受け、身分の低い者、社会からつまはじきされて、立身出生を妨げられた者などが多かったという。
当代社会を風刺した人形劇は、いまも伝統文化の一端として継承されている。(この欄は終り)。