ざいにち発コリアン社会
信用が一番、あらゆる相談に応じます
「石博士」の李洪均さん(写真中央)
●石の加工・販売27年の実績
、オリエント石材(愛知・豊田市)
●良質の朝鮮産花園石も即売り
日常生活とはちょっと縁の遠い石。しかし、石碑や墓石に代表されるように、実は人間社会とは密な関係にある。愛知県豊田市にある株式会社オリエント石材は、墓碑および外柵、各種石材の加工販売、墓地のあっ旋、造園工事、朝鮮や中国産など世界の石製品の輸入卸販売、アドバイスまでを一手に引き受けている。創業者で会長の李洪均さん(60)は、「石博士」として知られる人物だ。次男の哲勲さん(32)と営む。
李洪均さんがこの業界に足を踏み入れたのは27年前、良質と評判の高い朝鮮産の花崗岩を日本に輸入する事業に携わったのがきっかけだった。
以来、「石の上にも3年」と修行を重ねながら石材に関する知識や技術などを体得した。そして現在、熟練が必要とされる墓石加工を月10組、完成させるまでに事業を発展させた。
その一方で、朝鮮現地にも足を運び技術者を育てた。店頭には、朝鮮産の石製品が並ぶ。
石屋には「頑固者が多い」と言われるが、李さんも自らそれを自負する。
「例えば、墓石は先祖を供養するものなので、納得のいく物を造らなければいけない。この業界、口コミで訪ねてくる客も多く、信用が一番です。10年後でもアフターケアはバッチリ行います」
全国各地にも足を運ぶ。
戦時中、広島県北部の神野瀬川に建設された高暮ダム工事に動員され、無念に命を奪われた同胞犠牲者を弔う追悼碑(1995年建立)も、李さんが手掛けた。故郷の土に埋めることはできなかったが、少しでも犠牲者の故郷と関わりある物をと、朝鮮産の花崗岩を使った。
代表取締役の哲勲さんは、アボジに続こうと石材の研究に余念がない。今、力を入れているのは、朝鮮式の墓石の造り方だ。
「早く成果を出せるよう引き続き努力をしていきます。墓の建立など、石について知りたいことがあれば、いつでも相談に応じます」と話していた (羅基哲記者)
本社加工工場 〒470―0334 愛知県豊田市花本町井前148
TEL 0565・45・6278/FAX
0565・45・8675
【李さんのアドバイス】
必ず表に本質を刻む、裏には故人の簡単な歴史を
どのように墓石を建てたらいいのか、通名は避けること
時代の流れとともに最近、日本に墓を建てる同胞が増えている。建立に際し、欠けていてはならない点について、李洪均さんにアドバイスをしてもらった。
◇ ◇
家墓を建てる際、まず必ず墓石の表に本貫(始祖の故郷)を入れなければなりません。密陽出身の朴さんの場合、例えば、「密陽朴氏之墓」あるいは「密陽朴公家之墓」といったように。
しかし、チェサ(祭祀)の際に使用するチバン(紙榜)の文字(例えば顯考=故人が父であることを意味する決められた文字)までを明記する必要はない。どこの家の出身であるかが分かりさえすればよいのです。
それに漢字だけでなく、ウリマル(朝鮮語)で墓名を刻んだり、故郷に近い所で採れた石(あるいは朝鮮半島産の石)を使用することを勧めたい。
好ましくないのは、金田や張本などの通名を刻むことです。植民地支配時代、創始改名によって強要された日本名を使うことは、民族の魂までも奪われてしまうことにつながるからです。
また、墓石の裏に、本籍や生年月日だけでなく、故人の歴史を簡単にでも刻んでおくとよいと思います。墓参りを通じて、子孫たちは先祖の人柄を知ることができるからです。その過程を通じて、自然な形で民族意識を守っていくことにもつながります。そういった意味で墓石は、「民族を守る最後の砦」と言えます。