財産管理など法的にサポート
4月施行の新制度「成年後見制度」とは?


 知的障害や痴呆などの理由で判断能力が不十分な人たちを法的に保護する「成年後見制度」が、4月から新たに施行される。制度の仕組みと特徴、今後の課題について、Q&A方式でまとめてみた。

  制度の内容は?

  本人の意思で後見契約
   
世話の度合で3段落に区分 

  成年後見制度とは具体的にどのような制度?

  判断能力が不十分なことから、財産管理などの法律行為を自らの意思で決定して行うことが難しい人を、本人の判断を最大限に反映したうえで、法的に保護しようというもの。永住権を持つ在日同胞も当然、受けることができる制度だ。

 大きくは「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つに分けられる。

 法定後見制度は法律で定められた制度で、内容も原則的に法律または家庭裁判所によって定められる。当事者が受けるサポートの必要性によって、(1)補助(対象=障害の軽い人) (2)補佐(判断能力が不十分な人) (3)後見(判断能力に欠ける人)――の3制度に、対象者を区分している。

 補助・補佐・後見人には、親族も含め社会福祉士や弁護士などから、家庭裁判所が適任者を選ぶ。法人や、複数の人が就くのも可能だ。選ばれた人は、当事者本人の能力に応じて、医療費の支払いや不動産の売却、介護契約の締結、日用品の購入や光熱費の支払いに至るまで、本人の手続きを代理して行う。

 一方、任意後見制度はこれとは異なり、サポートを受ける本人が任意に契約して後見を受けるもの。内容も原則的に契約によって定められる。例えば、本人に十分、判断能力が残っているうちに、衰えた際に備えて世話を頼む契約をすることも可能だ。

 任意後見人が代理行為をする際には、必ず家庭裁判所が認めた任意後見監督人が、その行為の善し悪しを監督する。監督人の選任がなければ、代理行為はできない。

 成年後見制度の大きな特徴は、サポートを受ける本人の自己決定権を最大限に尊重している精神だ。とくに任意後見制度は、制度を利用するかどうかも含め、全面的に本人の同意に基づくものである。法定後見制度に関しても、補助と補佐については当事者本人がサポートの範囲を決める。

  制定に至った背景は?

  「禁治産」への批判 機に
   
知的障害、痴呆症など 人権保護へ

  成年後見制度が新たに設けられた背景は?

  判断能力が不十分な人たちを保護する制度は以前からあった。現行の「禁治産・準禁治産制度」がそれであるが、人権への配慮に欠ける制度だという批判が徐々に増え出した。

 禁治産とは「治産(財産の管理・処分)を禁じる」、つまり「自らの判断で財産管理を行えないと見なし、これを禁じる」という意味である。準禁治産は「禁治産者に準じる」、すなわち「行えなくはないが不十分と見なす」となる。

 だが、この名称には「無能力のレッテル」というネガティブなイメージがつきまとってきた。現に、家庭裁判所から禁治産者との宣告を受けると、選挙権がなくなり、戸籍にも書かれる。こうした差別を改め、内容も見直そうということから、改正論議に火が付いた。

 判断能力が不十分という弱みにつけこんだ悪質な詐欺被害を防ぐことも、理由の一つだ。

 最近、相次いでいるのが、事情を飲み込めないまま、いらない物を買わされたり、複数の金融業者から多額の融資をさせられるなどのケースだ。信頼していた友人や知人に裏切られたショックは想像に難くない。

 こうした悲劇を繰り返さないため、新制度では任意後見制度が設けられた。信頼のおける適任者を後見人に選び、本人が無謀な融資契約を結ばされた後でも取り消しができるようにすることで、被害を未然に防ごうというものだ。

 判断能力が衰えたといっても、現実的には現行の禁治産・準禁治産制度を使わず、家族がその人を保護するだけにとどまるケースが多い。現行制度の受付件数は増加傾向にはあるものの、絶対数はまだ少ない。マイナスイメージの根強さとともに、制度の存在が浸透していないことがある。

 そこで、1997年9月に法務省民事局の成年後見問題研究会が研究発表をしたのを受けて、法制審議会民法部会・成年後見小委員会で論議が進められ、98年4月に試案をまとめ、昨年12月には改正案が衆議院で可決・成立に至った。

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