ざいにち発コリアン社会
在宅サービス事業所「エルファ」 京都市伏見区
4月からの介護保険、着々と派遣準備
朝鮮語で介護、料理もOK 親身に
4月からスタートする介護保険制度。昨年11月に京都府知事から介護保険の準備指定を受けた居宅サービス事業所「エルファ」(京都市伏見区)では今、ホームヘルパー派遣の準備が着々と進められている。朝鮮語の話せる2、3世の2級ヘルパー7人を抱える同事業所は、在日同胞高齢者の生活全般を手助けしていくことをめざしている。
ハラボジ、ハルモニの手助けを
月に1度の勉強会
「生活保護を受けてはる人の保険料はどうなってるん」、「食事が口にあわんかったらどないしよう」
4日土曜の夜、「エルファ」事業所に集まった同胞ヘルパーたちの論議は遅くまで続く。昨年9月から始めてきた勉強会も佳境にさしかかり、4月からの介護保険制度スタートを前に、参加したヘルパーたちのやりとりにも熱が入る。
勉強会は、「不安と孤独を誇りとやりがいに変える」をモットーに、月1回のペースで行われ、同胞ヘルパーの役割、家事介護・身体介護について、同胞高齢者の特性――などのテーマを取り上げてきた。
「勉強会に参加して以来、お年寄りに対する接し方が変わった」と2級ヘルパーの1人、申春花さん(45)はいう。
日本人の介護福祉士も
「エルファ」のセールスポイントは、朝鮮語が話せて民族の風習に明るく、朝鮮の料理も作れる同胞の2級ヘルパーを抱えていることだ。
管理責任者で2世の鄭禧淳さん(京都同胞生活相談所所長=56)は、「1世の中には年老いて痴ほうが進み、日本語を忘れてしまった人もいる。そんな人たちが、言葉の通じない日本の病院に入るのを見ると胸が痛む」と語る。
だから、身の回りの世話をするだけでなく、キムチやチジミなどの朝鮮料理を作って味わってもらい、不安なくゆったりとした気持ちで介護を受けられる体制作りを考えてきた。今後、今の7人に加え、ヘルパーを4、5人増員する予定だ。
日本人のスタッフも1人いる。介護福祉士の藤井栄さん(48)。「在日の人や障害者など、マイノリティの人々のために何かしたいと思っていた時に、鄭さんから話があり、2つ返事で引き受けた」と話す。
勉強会では、参考になる書籍や様々な対処方を紹介するなど、同胞ヘルパーたちにとっての良き相談相手となっている。
新聞記事から広がる輪
「立ち上がったコリアン2・3世―在日1世に介護の手」
こんな見出しと共に、朝日新聞2月24日付朝刊に「エルファ」のことが紹介された。その後、「何かお手伝いできないか」という同胞からの問い合わせの電話が数件かかってきたという。
その1人、30代のある同胞は、4日の勉強会に顔を出した。「介護の問題には関心があった。ヘルパーの資格もとり、在日高齢者のために役立てていきたい」と語った。介護の輪は着実に広がっている。
「ヘルパーはまず、高齢者やその家族など、人の心理をつかんでなごませることが大切。そして、私たちは介護のプロだということを忘れてはいけない」と、2級ヘルパーの李福順さん(58)は話す。
管理責任者の鄭さんは「ハラボジ、ハルモニたちに奉仕するのだというボランティア精神、これが『エルファ』の精神でもある。『エルファ』に頼んで良かったという声があちこちから聞かれるようにしたい」と決意を語っていた。(文聖姫記者)
介護にあたるスタッフたち
スタッフ 藤井栄(介護福祉士・鍼灸マッサージ士)
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「エルファ」 〒612−0029 京都市伏見区深草 西浦町6−6−1 |