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ECONOMIC NAVIGATOR
環境重視の経済へ、企業活動に包囲網
企業に商品包装の再商品化を義務づける容器包装リサイクル法(容リ法)が、4月から完全実施される。来年には家電リサイクル法(家電法)が施行予定で、これらを統括する循環型社会基本法案もそのうえにのぼって来た。いずれも、自然環境に負荷を与えない循環型社会を目指す一手だが、実はこうした規制のほかにも、企業活動を包み込む形で、経済に環境保全を組み込む仕組み作りが進んでいる。その概要を見る。
リサイクル法/強制力、競争も促す
容リ法は、97年にガラス瓶とペットボトルを対象に施行され、今年から紙およびプラスチック製品も対象になる。消費者がこれら容器包装を分別して捨て、市町村がそれを分別回収、企業が再商品化する。つまりは企業の費用負担のもとに資源の再利用を行う仕組みだ。一方、家電リサイクル法では消費者が廃棄時に、費用を支払う。
リサイクルはコストがかかるだけに、放っておけば回避され、ゴミの減量も資源の循環も行われない。そこで、法による強制が必要になるわけだ。
ポイントは、企業にリサイクルの方法を選ぶ余地があることだ。容リ法では自社で行うか指定法人に委託金を支払う。家電法では、自社独自か他社との共同でリサイクル施設を建設運営する。
費用を企業が負担する容リ法の場合はもちろん、消費者負担の家電法の場合でも、結局はメーカーの価格競争にはねかえる。すでに東芝や松下などが共同で、三菱が独自にリサイクル工場を建設するなど、メーカーはそれぞれの戦略に沿って動き出している。
エコファンド/賃金で自主努力誘う
容リ法の完全施行を控え、証券専門家のなかには、この分野で強みを持つ企業を注視する向きがある。例えば食品トレーをベンチや椅子に再生・販売している食品容器トップや、独自のリサイクル技術の開発に注力している簡易食品トレーの最大手などだ。こうした独自技術が規制によって競争優位につながれば当然、株価に反映されるからだ。
市場経済を循環型へと導くうえで、こうした環境分野と金融市場とのつながりが重視されている。そのなかで伸びている金融商品が、エコファンドと言われる投資信託だ。環境問題に対する関心の高まりに比例して、人気を高めている。
欧米には倫理的・社会的な観点から投資対象を選ぶ「社会的責任投資」という概念がある。エコファンドもその一種で、対象選別の基準は環境への配慮だ。
環境に配慮すると言っても、エコファンドは収益を目的に運用される金融商品だ。世界でも有名なスイスUBSグループの「グローバル・エコ・ファンド」は、ファンド総額の85%を、世界的な大企業に投資して安定性を高め、残り15%を環境分野で成長力のある小型・中堅企業に振り向けているとされる。
日本では昨年、4本のエコファンドが登場。若者や女性を中心に人気を集めている。8月に第1号として設定された「日興エコファンド」(日興アセットマネジメント)は、これまでに1300億円を集めた。欧州のエコファンドが昨年中頃で3900億円規模と推定されていたのと比べると、その急伸ぶりが分かる。
各種の規制が、企業を環境保全に向かわせる強制力になっているのに対し、資金調達に結び付くエコファンドは、自主的な努力を促す性格が強いと言える。
排出権取引/技術の付加価値高める
ほかに、環境保全とビジネスを結び付ける仕組みとして、CO2(二酸化炭素)の排出権取引がある。
地球温暖化防止のために企業や国ごとにCO2ガスの排出上限を定め、それを守れない企業や国が、余裕のあるところから排出権を買い取ることで、全体の削減目標を満たそうというものだ。この取り引きは、米国内ではすでに実績があり、企業間で年間数10億ドルの取り引きが行われている。
1997年12月の地球温暖化防止京都会議でも、各国の削減目標を実現する方策として排出権取引の導入が決められた。
今は、具体的なルール設定が待たれているが、将来的には、排出権取引は年間売買高が20兆円にも達するとの試算もある。
そうなれば、企業の排出量抑制の技術的優位が付加価値を増し、仲介する金融機関には大きなビジネスチャンスとなるわけだ。 (金賢記者)