女のCHINEMA

「ロゼッタ」


生存を賭けた、少女の闘い

 アルコール依存症の母を抱えてトレーラーハウスに住む17歳の少女・ロゼッタの度重なる失業と、生存を賭けた職探しのあくなき闘いの物語。

 冒頭、理由もなく解雇されるロゼッタの必死の抵抗シーン。机や扉に手当たり次第しがみつき、ロッカールームに立てこもって暴れるがあえなくつまみ出されてしまう。

 ハウスに戻ると、母が酒ほしさに男をひっぱり込んでいる。ロゼッタは酒びんを叩き割り、もらった食物を投げ捨てる。「乞食じゃない!」。

 カメラアングルは終始至近距離。ロゼッタは肩をいからせ、目尻を上げ、固く口を結び、愚痴も言わずこびも売らない。頑なまでに自らの足でたよって立とうと踏んばる。その姿は、貧しさによってことごとく損なわれようとする人間の尊厳への強い危機意識と身にふりかかる理不尽への抗拒であろう。

 ロゼッタの願いはただ1つ。「まっとうに働いて普通の生活がしたい」。そのために自分を助けてくれた友人も裏切った。しかし、苦い思いと共に矢折れ尽き果てて、泥酔した母を道連れに自殺を図るが失敗。自分を受け入れない社会の非情さに感極まって泣き崩れるロゼッタ。その肩を抱き起こしてくれたのはロゼッタが裏切った友人だった…。

 舞台となったベルギーやヨーロッパの先進国では人口の1割から2割の人々がロゼッタのような状況にあるというから驚く。日本でも女性の完全失業者数は123三万人にものぼるという。世は大失業の時代。

 断ち切るようなエンディングに、この不安定な時代を生き抜くことの厳しさと苦さが深い余韻となって胸に迫る。 

  リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌの兄弟監督。93分。ベルギー・フランス合作。   (鈴)

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