春・夏・秋・冬

 都内では桜がほとんど散ってしまった四月中旬、長野県の山に友人らと登った。里に本格的な春が訪れても、山ではようやく雪どけとよく言われる。1500メートル級の山だったが、深いところでは50センチほどもまだ雪が残っていた。先頭のリーダーはラッセルに苦労したが、思わぬ「冬山」を楽しめた

▼途中、日当たりのよい雪どけの斜面には、フキノトウが一面芽を出していた。しっとりと重い枯れ葉を持ち上げてスクスク育つ、その姿は可憐でさえあった。フキノトウは雪がとけると真っ先に顔を出し、いち早く春を告げる早春の植物

▼しばし、登りの疲れも忘れて山菜摘みを楽しんだ。早速、昼食のラーメンに入れて食べたが、香りが何とも言えなかった。山に登り、自然との触れ合いを深め、その恵みを味わって元気を与えられたようだ。後日、百貨店の食品売場に出ていたフキノトウを見ると、6〜7個入ったワンパックが4〜500円もしていた

▼四季折々、野山は食料の宝庫で、同胞の中にも山菜取りを楽しむ人が多いが、山菜取りにもマナーがある。どんなにたくさんあっても乱獲はしない。全部採取しないで、小さな球根の一片、一茎は残しておく。山野草は誰かが種をまいて殖やしているわけではない。そうしてこそ、来年もその恵みを楽しめる

▼また国立・国定公園、自然保護地域ではいっさいの植物、動物、鉱物を取ることが法律で禁じられているので要注意。最後に、取ったものは必ず持ち帰り調理して食べること。それが自然の恵みを受け自然に親しむものの義務といえよう。 (喜)

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