それぞれの四季

月見草の種/李錦玉


 なつかしい日本の友人から手紙がとどいた。数年前、広島のS市でお会いしたが、折にふれて思い出していた。花の話題で盛り上がり、すっかり親しくなったのだった。帰り際に庭で取れたふきのとうをお土産にいただいたことも忘れられなかった。封を切るとやさしい筆跡で「お約束の月見草の種を送ります。桜の季節がよいということで、ちょうど蒔きごろだと思います」と書いている。

 また発芽後、成長した苗の定植、施肥のことも書きそえてあった。花は夏の夕方6時ごろからつぼみがふくらみ始め、8時から9時ごろに開花するという。たった一晩だけの花、色は白からピンクに変わり翌朝はしぼんでしまう花を、友は「月を見て咲く花だと、毎年、不思議な神秘的な気持ちで眺めて」いるのだ。

 私は手紙を読みながら、夜の闇の中で白い花をつけて揺れている月見草を思い、それを飽かず眺める友に心をはせていた。

 月見草の種は、ほんとうに細かい細かい赤銅色の粒だった。ようやく今、緑の小さな双葉を広げている。もう少し大きくなったら間引きをしよう。

 月見草=オオマツヨイグサは、河原や土手などに自生し、夏の夕方黄色の四弁花が咲き、翌朝しぼむが、友人が送ってくれた種類は、アメリカ原産のはかばな科の2年生植物で、今はほとんどみられないらしい。

 「近かったら、花の話がいっぱいできるのにと想像しています」と残念がる友人。でもこうして花の種がとどきました。朝鮮の日本の世界の花の話を折にふれて交わしましょう。  (童話作家) 

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