ニュースの眼
朝米ローマ会談と今後の展望
懸案の一括妥結で合意か 軽水炉遅延の電力損失補償も 朝米次官級会談が、5月24日から30日までローマで開かれた。会談で双方は
(1)論議された諸問題が、両国間の関係改善に即して1日も早く実践に移されるべきだという点において見解の一致を見
(2)
今後も多岐にわたる会談を行って懸案問題に対する論議を続けることで合意(朝鮮外務省代弁人5月31日)したが、いったい何が話し合われたのか。現在の朝米関係を探ってみた。 今会談について朝鮮外務省代弁人は (1) 軽水炉提供の遅れによる電力の損失補償問題を主にし (2) 米国が昨年9月に発表した対朝鮮経済制裁解除措置を施行する問題など懸案問題が深く討議されたと明らかにした。 一方、米国務省も30日付の代弁人声明で「(94年の朝米)基本合意の履行と関連した各自の関心事項とその他の双方の関心事について論議した」と発表している。 朝米基本合意では、米国が2003年までに朝鮮に200キロワット規模の軽水炉発電所を提供することと、双方が政治および経済関係を完全に正常化するために努力することを約束した。 しかし、資金集めの難航など米国側の事情で着工そのものが遅れ、2003年の完成は物理的に困難な状態にある。したがって軽水炉建設の遅延による電力損失問題は、基本合意の範ちゅうに入る。 同時に、米国の対朝鮮経済制裁解除問題も、基本合意でうたわれた両国の関係正常化へのワンステップで当然、基本合意履行問題の1つである。表現は違うが今会談で双方は基本合意の履行問題を協議したのは間違いない。 問題は、懸案解決の優先順位である。 朝鮮側が軽水炉建設遅延に伴う電力補償と経済制裁解除を求めたのに対し、米国側はミサイル実験の恒久的な中止(朝鮮は昨年9月、朝米会談が行われている期間、ミサイル発射を行わないと発表)を求めた。 また経済制裁解除については、クリントン米大統領が昨年9月に「敵国通商法」による制裁措置の解除を発表したものの、いまだに実施されていないのが現状だ。もう1つの「テロ支援国規定」による制裁措置についても米国は、「赤軍派メンバーの送還」などを前提条件にしている。 これらの問題が、今回の会談でどのように協議されたのか、残念ながら明らかになったものはない。 ただ、朝鮮側団長の金桂寛外務省副相は、電力損失について米国側が「研究する」と述べたことを明らかにしており、米国務省スポークスマンも「(会談が)真しで建設的な方式」で行われ、「われわれは進展をみた」と評価していることから、ある一定の前進があったことは間違いない。 注目されるのは、南朝鮮の外交関係者の間で、「米国が朝鮮に対して食糧支援と軽水炉建設支援に対する補償を行ったはずだ」という指摘があることだ。 一昨年に浮上した金倉里の「地下核疑惑」で朝鮮は、米国に施設の 見物料 を支払うよう要求していた。米国は要求には応じられないと突っぱねたが、結果的には昨年60万トンの食糧を朝鮮に支援した。今回の建設遅延に伴う電力損失について、米国がなんらかの補償を行ったとしても不思議ではない。 それからもう1つ注目されるのは、米国が今回の会談をペリー対朝鮮政策調整官がクリントン大統領に提出した報告書で勧告した「基本合意履行に関する新しい協商を始める契機として利用した」点だ。ペリー調整官は、包括的で統合した対朝鮮政策の推進を勧告している。つまり朝鮮側の要求と米国側の要求との同時処理である。 昨年3月以来、中断していたミサイル問題に関する朝米協議が5月31日から再開され、行方不明米兵の遺骨問題を協議する会談も今月7日に始まるというニュースは、朝米双方が懸案の一括解決に向けて動き出したことを示唆する。 そして、双方の懸案がある程度解決した時点で、ワシントンでの高位級会談が開かれ、朝米は名実ともに新たな関係を構築し、その時期は、遅くとも米大統領選挙の11月以前と見られている。 (元英哲記者) |