投  稿

「統一列車は走る」

金 正 培


 2000年6月13日

 ソウル空港より一機の特別機が

 満願の思いを乗せて

 わずかな空に爆音の響きを残したまま

 ピョンヤンの空港に滑り降りた

 今世紀最後の瞬間に 世界の120億の瞳と耳を集中させ

 空に残された爆音の波動は 7つの海に津波を起こし 五大陸を地底から揺り動かした



 南の金大中大統領はタラップを降り立ち

 「目と鼻の先に あまりにも長い歳月をかけて 遠回りに遠回りしてたどり着いた」と 感激にむせびながら手を差しのべた

 北の金正日総書記は

 「民族の悲願の実現のために一大決心をされ よくぞこの地にお見えになられた」と 満面の笑みで迎えた

 ガッチリと握り交わした両首脳の姿に 祖国の山河も打ち震え 7000万の同胞は歓喜の涙を流した



 熱い希望を乗せて飛び立つソウル空港と ほとばしる喜びで迎えたピョンヤン空港も わが祖国の雄大な大地であり

 祈る思いで見送った南の民と 花を手に沿道を埋め尽くした北の民も 同じ歴史と同じ血をわかちあった兄弟である

 7000万の同胞はこの日の来ることを固く信じ 一日千秋の思いで待ちこがれてきた

 ああ、この日のために 輝けるこの日のために

 わが民族が流した血と涙は

 祖国の大河に満ちあふれ 三海の海原に流れ込み

 深く澄みきった青い海が

 滲(にじ)み出た血の色に赤く染められ

 わが民族の胸を掻き毟った慟哭の嘆きは 三千里の大地と天空に 1世紀にわたり鳴り止まなかった



 私が生まれおちた時 すでに祖国は色をなくして

 私が歩き始めた時 分断の悲劇が待っていた

 故郷は奪われ肉親を引き裂かれ

 アボジ、オモニたちは異国の空の下で 口に表すことのできない 辛く苦しい旅を強いられていた

 「統一列車は走る」を口ずさみ 「リムジンガン」のメロディーに涙した

 故郷への思いを晴らすことなく

 怨念の空に消え去ったアボジ、オモニの心を思うとき

 あまりにも長い無念の歳月が流れてしまった



 銃剣のおどしでわが祖国を 世界の地図より黒く塗りつぶし 輝かれる光を奪い去った36年間

 6000マイルも離れた所で軍靴を打ち鳴らし わが民族を分断の悲劇に陥れた55年間

 大国のエゴによって作られた 祖国と民族の受難の歴史は 永遠に忘れ去ることはないであろう

 だが いかなる強大な外圧をもってしても 民族の魂は奪い去ることはできず

 500年に一度生まれ変わる不死鳥のごとく

 今世紀の終焉に世界の目の前で 新たな民族の産声をあげた



 両首脳は「出会うことによって 民族の偉業はすでに半分はなしとげられた」と語り

 今 民族と祖国の運命を司る

 南・北の指導者が歴史の前に 全身全霊の魂を打ち込み 立ち向かい

 7000万の民族の力を信じ

 限りない支援と英知を求めた

 偉業の成就には予測のできない厳しさを感じるが 1世紀にわたる闘いの中で培った強靭な精神と

 血で結ばれた炎のような情熱があれば

 すべて苦難を打ち砕き

 大輪の花を咲かせるであろう



 祖国と民族の運命は自主的な 自らの手によって切り開かねばならず

 南北共同宣言は胸の奥深くに染み渡った

 記念すべきこの歴史的な日に 弾けるような喜びを押さえることができず

 異国の空の下で幾世代にもわたった 無念の思いを晴らすべく

 それぞれのささやかな祝いの酒を持ち寄り

 「統一列車は走る」「われらの願い」を心の底から歌い 信じて集まってきた

 両首脳が頬ずりして抱擁した姿に

 7000万のすべての同胞は

 血を分かち合った兄弟の絆を取り戻し

 統一を迎えた喜びに

 チャンゴのリズムで大地が歌い

 かつての河や海は歓喜の涙であふれ

 山河の木々や花たちも 幾夜の月の明りが消えるまで歌い踊り続ける日が

 ハッキリと眼に浮かび上がってきた

 私、一人だけの夢であろうか!

(59歳、北九州市在住)

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