女のCHINEMA

「ロッタちゃんと赤いじてんしゃ」


 スウェーデンの小さな町・ヴィンメルビーに住むニイマン家の末っ子ロッタは、やりたいことをトコトンやり抜く5歳のガンコもの。ロッタを中心に、好奇心がいっぱい、冒険好きな子供たちの生活を生き生きと描いている。

 原作は、「長くつ下のピッピ」で知られるスウェーデンの代表的童話作家・アストリッド・リンドグレーンの「ロッタちゃん」シリーズ。先に公開された「ロッタちゃん はじめてのおつかい」の続編。

 ロッタの家族は、両親と兄、姉。隣のベルイおばさんも家族同様だ。

 春から夏にかけて、スウェーデンの最も美しい季節の中で、ニイマン家の人々が暮らしを楽しむ。自然とたっぷり触れ合う湖へのピクニック。サマータイムで早めに帰宅したパパを迎えて、開放的テラスでの夕食のひととき。みんなで祝ったロッタ5歳の誕生日。

 そして、夏休み。田舎のおじいさん、おばあさんの家に一家で遊びに行く。

 牛を追ったり、ジャム作りをしたり。だが、小さいからと自転車を使わせてもらえないロッタは遠出のサイクリングに行けない。雨の日、肥料の牛糞とワラの上で「大きくなりたい」と叫ぶロッタ。魚の嫌いなロッタは、朝食のニシンのソテーを水に泳がせたり、イヤなものはどこまでもイヤを通す。

 そして、どうしても自転車に乗りたいロッタは、ベルイおばさん家の物置から取り出した大人用の自転車に乗る…。

 どこまでも意地を貫くロッタの行為を大人たちは頭ごなしに叱らない。小さいからと侮ることもない。ゆったりと柔らかな視線が注がれる。生き生きと、今を生きるロッタの行動を見守る。「理想の子供」を強いない。

 豊かな自然、穏やかな時間、大らかな愛――ロッタを包む極上の環境である。成熟した社会でこそ、個性豊かに育つ。美しい自然風土もまた、ロッタの自我をのびのびと育む。ヨハンナ・ハルド監督。78分。スウェーデン映画。(鈴)

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