グローバル新風

「受難」踏み台に飛躍


 南北朝鮮の緊張緩和を受け、半島北半部の経済的可能性がにわかに注目されているが、緊張から解かれて飛躍を遂げた先例として、無視できない国がある。

 ユダヤ人は、3000年におよぶ受難の歴史で鍛えられた結果か、歴代ノーベル賞受賞者のうち、実に2割を占めるほどの秀才だ。1948年のイスラエル建国後も四方を囲む国々と敵対し、彼らの頭脳は軍事技術に傾注された。

 しかし90年代、中東に和平の道筋が見えると、緊張の中で鍛えられた才能が経済に振り向けられるようになったのである。

 同国の主な輸出品は、農産物やダイヤモンドなどの1次産品だったが、軍事技術の民間への還流などによって、ハイテク部門が急成長。旧ソ連から優秀なユダヤ人技術者たちが移民して来るという、もう1つの歴史上の追い風も加わり、今や輸出の半分近くがハイテク製品になっている。

 軍事を起源とした技術に強いだけに、インターネットのセキュリティ分野でも代名詞的な存在だ。ネットのファイアウォール(防護壁)部門では、世界市場の4割を占める。

  ほかにも、世界で1億人以上のユーザーを持つ超人気のコミュニケーションソフト「ICQ」も、イスラエルのベンチャー企業が開発した。

 米店頭株式市場ナスダックには、ハイテク関連を中心に100以上のイスラエル企業が公開。これは、北米以外の国ではトップだ。インテルやIBMなどはイスラエルに研究開発拠点を置き、頭脳のアウトソーシングを行っている。

 受難に鍛えられた国の、緊張緩和による飛躍――朝鮮半島に同じ希望を見てしまうのは、筆者だけだろうか。

(李達英=朝・日輸出入商社)

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