ソウルで初公演 金剛山歌劇団の3世メンバー
「民族性のバトン」
3,4世がきっちり受けとめたい
魂の表現者、伝達者に
21世紀、在日同胞社会における世代交替がますます進んでいくことは避けて通れない現実だ。日本で生まれ育った3、4世が中心世代となり、民族性を継承し、発展させていくことがさらに大きな課題として提起されてくることは言うまでもない。昨年末、結成45年目にして初めてソウル公演を行い、異国に生きながらもその民族性あふれたプログラムで市民を魅了した金剛山歌劇団。器楽部所属の李基成さん(23)、舞踊部所属の趙美鶴さん(22)、声楽部所属の全明華さん(22)の3人(いずれも3世)に、異国で民族の言葉、文化を守ることの大切さ、民族教育の重要さについて話し合ってもらった。 (社会・生活欄に3人の座談会) 両肩に責任感 「民族性の希薄化など、在日同胞社会も様々な問題を抱えているが、私たちの公演を見て一人でも多くの人が民族について何か感じてくれたら。日本に住む同胞たちが祖国にいなくても祖国を肌で感じ、民族の魂に触れる場になれば、とつねに考えている」と話すのは李基成さんだ。 全明華さんは、ソウル公演の際も、民族文化の伝達者、担い手であることを十分意識したと語る。「日本で長い間、民族の言葉や文化を守ってきた在日の歴史を両肩に担っているという責任感から、プレッシャーも相当感じた」。しかし、ソウル市民たちは民謡メドレーに感服していた。 民族性の薄れを危ぐ 公演を見た大学教授は、「総聯は日本という異国、困難な環境にもかかわらず、民族学校を設立、維持し、その大きな力を割いて民族教育を行ってきた。だから、今日のような、民族性に終始一貫彩られた公演を行う人材を育てられたのだろう」と述べていた。 「民族教育を受けていない自分など想像できない。私にとっては当然のこと」(李さん)、「民族教育を受けていなければ朝鮮人になっていなかっただろう」(趙さん)、「私の存在自体が民族教育の正当性を証明している」(全さん)と、異口同音に語る。 毎年2〜4月にかけて祖国のあたたかい配慮で、一流講師の指導による研修を受けられるのも、民族性を磨く大きな要因の1つになっているという。 「1つの曲を教わるうえでも、祖国と日本の講師では全然違う。朝鮮の曲を演奏するためには、祖国で学ぶのが一番だ。技術面だけでなく何のために演奏するのかという心の部分を教えてもらえるからだ」(李さん)。 一方で、在日の社会で民族性が薄れていくことに、「恥ずかしさを感じる」と趙さんは語る。 「1世の人たちが身を体して学校や民族性を守ってきたことを考えると、現状には胸が痛む。私たち3世の任務は、4世、5世に『民族性のバトン』をきっちり渡すこと。そのために私は、これからも公演を通じて民族の歴史と魂を伝える表現者、伝達者でありたい」(文聖姫記者) |