公安調査庁の外国人登録原票違法調査事件
大阪で緊急集会

在日同胞を犯罪者扱い

謝罪、再発防止を強く要求


 緊急集会「公安調査庁(公調)による外国人登録原票違法調査事件の問題点と背景」が2日、大阪市のアピオ大阪で行われ、府下の同胞、日本市民ら100人が参加した。在日外国人人権セミナー大阪(旧称=在日本朝鮮人人権セミナー大阪)が主催した集会では3人が報告し、破壊活動防止法(破防法)を乱用し、在日朝鮮人の外国人登録原票(外登原票)を不当に入手した公安調査庁と行政当局の違法行為を厳しく非難。参加者は、公調ならびに行政当局が@事件が違法かつ不当、人権侵害であることを認め、市内在住すべての在日外国人に対して謝罪するA再発防止策を公表すること――などを求めるアピールを採択した。

公安調査庁と行政当局の違法行為を厳しく非難する朝・日3人の報告者
朝・日市民ら100人が参加した緊急集会(2日、大阪市)

 大阪市では近畿公安調査局と京都公安調査事務所の依頼にもとづき今年4〜8月、12区役所で63人分におよぶ在日朝鮮人の外登原票が公調に渡されていた。

 基調報告をした田中宏・龍谷大学教授は、日本政府は戦後一貫して在日朝鮮人を治安管理の対象とし、その権利を著しく制限してきたと述べ、外国人登録法(外登法)はその手段となってきたと指摘。1996年に発覚した小平警察署による外登原票入手事件や今回の事件を通じてその体質が変わっていないことが明らかになったと強調した。

 洪敬義・在日本朝鮮人人権協会近畿地方本部会長は、事件の背景と経過について報告。公調が原票を入手した目的は民族団体、とりわけ総聯の活動と内部事情に対する情報収集で、今年5月の第19回全体大会以降の人事や民族金融機関の再建問題について情報を集めていたのではないかと推測した。また事件の背景にはオウム事件以降、その存在価値が疑問視されている公調の生き残り策や日本社会の右傾化があると述べ、小泉首相の靖国神社参拝、歴史わい曲教科書の検定合格、米国のテロ事件に便乗した自衛隊の海外派兵などの動きを非難した。

 このたび公調は、「破壊活動防止法第27条に基づく破壊的団体の規制に関する調査のため必要」という口実のもとに原票を入手していた。報告者の空野佳弘弁護士は、公調の原票入手を「破防法の乱用」と断じたうえで、事件の違法性について詳しく述べた。空野氏は、憲法が定めたプライバシー保護の権利や外登法の条文にある原票の原則非公開の規定、また破防法が定めた乱用防止規定に照らしても、今回の事件は明らかな違法行為だと指摘した。

 大阪市では9月末、市内在住の同胞が市の個人情報保護条例に基づいて公調からの依頼文書などの開示を請求したところ、1999、2000年の2年にわたって原票が開示されていた事実が発覚した。集会ではこの事実も報告され、公調が誰の原票をどれくらいの期間にわたって入手していたのかという実態解明を急ぐことも、再発防止のために重要だと指摘された。

 個人情報が記載された外登原票の開示は法務省の内規などで制約が課されている。行政が内規を順守し、外国人の人権を守る立場を堅持していれば公調にやすやすと原票が流れなかったことから、集会では自治体の人権意識の低さについても非難の声があがった。

 田中教授は、総聯京都府本部、府内の日本人研究者とともに京都市に対する再発防止策を求めてきた結果、市が公調の開示請求に対して原票の写しを渡さないことを決めた通知を出したことを報告しながら、今後行政に対して徹底した再発防止策を求め、その順守状況についてチェックし続けるべきだと強調した。

 在日朝鮮人を犯罪容疑者とみなした公調に対する憤りは強く、会場からは事件の違法性を論証するために訴訟を起こすべきだなどという意見も出た。

(報告者発言要旨)

公安調査庁の外国人登録原票違法調査事件/緊急集会の発言から

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