朝鮮の医療を世界的水準に
第4回内外同胞たちの平壌医学科学討論会に参加して
金光錫
第4回内外同胞たちの平壌医学科学討論会が4月29、30日に平壌で開催された。筆者は医協代表団の一員として同討論会に参加した。以下、討論会の模様と朝鮮医学の現状についてまとめた。
注目された論文 膵臓移植の研究 今回の討論会には在日代表6人、在米代表10人、国内からは平壌を中心とした全国の医科大学病院、一般病院の医師など国内外の医学者が多数参加した。 4回目となる平壌医学科学討論会は医学・医療に関する最新情報、世界すう勢などの情報を収集し、朝鮮の医療を世界的水準に引き上げるための唯一の場である。国内でも数多くの専門学会があるが、この討論会に寄せる期待は大きい。 今回、この討論会に提出された論文は55編、発表論文は33編だったが、国内医学者の発表論文は主に臨床研究論文が中心であった。平壌医学大学の朴勝男教授(病理学)によると、その中でも注目する論文は、@異種膵臓(すいぞう)移植に対する基礎的研究(平壌市第1病院)A人工血管による腹部大動脈、腸骨動脈バイパス術に対する臨床的研究(金萬有病院)Bわれわれが開発した形状記憶合金ステンドを経皮的冠動脈、動脈拡張術に適用するための研究(金萬有病院)C癌(がん)細胞に対しワクチンが抗腫瘍効果に与える影響についての病理組織学的および臨床的研究(平安北道人民病院)D高麗薬で高血圧長期管理時の眼底変化と脳卒中および予後に対する研究(高麗医学綜合病院)――などであった。これらの論文を通じて朝鮮でも膵臓移植手術が研究され、独自の人工血管とステンドが開発され、癌ワクチンに対する研究がなされている事が分かる。 医協代表も発表 最新情報を披露 また、海外同胞である在日同胞医師から1編、在米同胞医師から8編の研究論文が発表された。医協代表として在日同胞医師である日本医科大学脳神経外科の金景成先生が「ヒト下垂体腺腫におけるTRH受容体遺伝子発現に関する検討」を発表した(別掲参照)。在米同胞医師らは癌ワクチン、癌の放射線治療、癌治療におけるペインクリニックなど癌治療研究成果を披露した。 討論会全般を通じて感じた事だが、運営方法を改善する事が必要だ。全ての研究論文発表と質疑応答を一つの会議室で行うのは非効率的だ。分野が違う研究論文に対し、他の研究者はそれほど興味を注がないからだ。それよりもさまざまな分野の医学者が集まる場なので分科別のディスカッションをより充実し、専門分野での交流を深める事が重要だ。そうする事により朝鮮の医学を世界的水準に引き上げるという討論会本来の目的を達成できるし、より効果を期待できると思う。 朝鮮医学の現状 ストレス研究 今回、2日間にわたって朝鮮の医学者と意見を交換したが、彼らとの交流を通じて現在、朝鮮では日本でも同じように現代病であるストレスの研究、生活習慣病である糖尿病に対する研究、朝鮮の東医学である高麗医学を科学化する研究が盛んに行われていることを感じた。これらの疾病に対する研究もこのような交流を通じてより水準の高いものとなっていく事と思う。 来年はこの討論会も第5回の節目を迎える。主催者である朝鮮医学協会のチョン・ファベク書記長は、第5回は南朝鮮からの医師を招待するなど規模、内容においてより充実したものにしたいと、意欲を燃やしていた。来年も討論会に参加し、交流を深めたいと思った。(医協東日本本部常任理事、西新井病院勤務) |