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民族教育への差別−現状と課題

 大学受験資格問題を契機に、在日同胞と日本市民の間では今あらためて、民族教育へのさまざまな差別是正と処遇改善を求める声がわき起こっている。これまで、「外国人学校法案」の撤廃(60〜70年代に7回)、朝鮮大学校の認可(68年)、インターハイなどの全国大会参加(90年代)、JR定期券差別の是正(94年)などを実現してきたが、「各種学校」という理由で、@受験資格A助成B税制上の優遇措置などからの差別は解消されていない。すでに日本弁護士連合会は98年2月、内閣総理大臣および文部大臣(当時)にこれらの差別を是正するよう勧告、在日本朝鮮人人権協会も2001年8月、国連・社会権規約委で日本政府がその勧告を実行せず、無視している現状について報告した。日本政府による差別の現状などを整理するとともに、今後の課題について見た。

受験資格−大学は「検討中」、ハンディも

 受験資格には、大学、各種国家資格の受験問題などが含まれる。

 大学受験資格問題は、かねてからの要請にもかかわらず、文科省が3月6日、外国人学校の中で英米の評価機関の認証を受けたインターナショナルスクールの卒業生のみに与えるという方針を下したことを端に、「新たな差別の助長」という声が各地で上がった。これ以降、同胞と日本市民らは連日、文科省への要請、院内集会、デモなどを繰り広げた。とくに国立大学の教職員らも声明を発表(3月末現在、1437人が賛同)し、差別是正を訴えた。

 こうした世論に押され、文科省は同月28日、方針を凍結、再検討を余儀なくされた。

 3月6日の文科省の方針は、アジア系を中心にした外国人学校の除外、無認可学校への付与、公、私立大学の半数以上が受験資格を認めているものの国立はなぜだめなのか、などといったさまざまな問題点を残した。

 島根大学の内藤正中名誉教授は、「文科省の方針は自らが進めてきた『教育の国際化』に反するもので、国立大学の教員自身も民族学校の実情をみようとしなければ、民族差別の加担者になりかねない」と強調する。

 次に、各種国家資格の問題だが、朝鮮大学校卒業生の場合、司法書士、公認会計士、不動産鑑定士などの資格取得試験を受けるには、日本の大学卒業生なら免除される一次試験から合格しなければならない。免除対象になるには、日本の大学に通いながら一定の単位を取るか、日本の大学院に入学するかといった、ハンディを背負わされている。

助成金−公立の10分の1、私立の3分の1、納税でも権利なし

 朝鮮学校の学父母らは、日本人同様、納税の義務を果たしている。にもかかわらず、朝鮮学校には日本政府(国庫)からの補助は一切ない。

 地方自治体が支給している補助金も、日本学校に比べて少額だ。

 日本学校は公立(小中高)で年間80〜90万円、私立(同)では年間25〜30万円前後が生徒1人当たりに支給されるが、朝鮮学校は平均8万円前後で、公立の10分の1、私立の3分の1に過ぎない。(納税の)義務を強いて権利を保障せず、で明らかな差別、不平等だ。

 また朝鮮学校の生徒が日本学校に編入学すれば、前述の金額が支給される。しかし、日本学校から朝鮮学校に編入すると、助成金はその時点でストップする。

納税上の待遇−損金認めず、インターは認定

 税制上の待遇措置における差別とは、「各種学校」を理由に、日本政府が朝鮮学校への同胞の寄付を損金(控除)として認めていないことをいう。

 日本学校の場合、法人だと公立は全額、私立は別枠で一定額を損金として認めている。個人の場合は、公私立いずれも一定額を認定。

 さらに日本政府はこの4月から、英米の評価機関の認証を受けたインターナショナルスクールを「特定公益増進法人」に追加。私立同等の税制上の優遇を付与した。(羅基哲記者)

国連・社会権規約最終見解(2001年8月)

日弁連勧告書(1998年2月)

資格助成に対する日弁連報告書(1997年12月)

[朝鮮新報 2003.5.12]