〈金剛山歌劇団秋田公演〉 大盛況 華やかで幻想的な舞台に釘づけ |
1100人の観客 拍手とどよめきに揺れる
06金剛山歌劇団、歌と踊りのアンサンブル秋田公演(秋田県、秋田市、秋田市教育委など後援)の華やかな幕が1日、秋田市文化会館で上がり、会場いっぱいに詰めかけた1100人の観客を魅了した。 また、公演前日の8月31日には、同市内のホテルメトロポリタン秋田で秋田公演前夜祭が開かれ、公演実行委のメンバーをはじめ今公演に尽力した約150人が出席し、雰囲気を盛り上げた。
1日の公演当日は、さわやかな秋風に恵まれ、会場の文化会館の前には、真っ赤なサルビアが美しく咲き誇っていた。午後1時頃、ロビーに着くと、練習中のヘグム奏者の奏でる柔らかなメロディーに耳を傾けている人がいた。この日、会場に隣接する運動公園での開会式に出席するため青森からやってきた成田武弘・全日本還暦野球連盟理事であった。 「中国の胡弓とも違う初めて聴く音色だね。優しくて、艶があって、耳に心地よくて…。思わず足をとめてしまった」。同氏は、7日に青森でも公演があることを知ると、ぜひ足を運びたいと名残惜しそうにその場を去っていった。
開演の3時間半前の3時前には、市内の青木トシさん(79) 、青木幸子さん(76) が一番乗りで会場入り。2人は近所に住む仲良しで、トシさんは歌劇団の大ファン、4回目の観覧だという。幸子さんは「初めてなので、家に落ち着いていられず、会場に早く来てしまった」と照れた。 トシさんは「日本と朝鮮の間に難しい問題があることはわかっているが、互いに仲良くしていくことが一番大事なこと。朝鮮の歌と踊りは、日本のとは違ってとにかくきれいだし、懐かしさを感じる。何度でも観たい」としっかりとした口調で話してくれた。 4時過ぎにはすでに300人ほどの長蛇の列ができた。関係者たちの顔にも安堵の表情が浮かぶ。開場の5時半には、満員の人々がスムーズに入場できるように10人ずつ誘導する措置が取られた。
6時半、いよいよ開幕。今公演のテーマは「世代を超えて引き継がれる民族の想」。公演は器楽演奏、舞踊と歌謡を織り交ぜた2部構成だ。第1部が女性奏者による器楽演奏「西道アリラン」で幕が上がると、場内にはウオーというどよめきが広がった。女性独唱や独舞、男性重唱に会場を揺るがすような大きな拍手が送られる。会場を魅了したのは、チャンセナブ独奏の「青山里の豊作」、アンコール曲「ボヘミアンダンス」。その独創的な感性と豊かな伝統音楽の表現に客席が大いにわいた。 第2部は今年の初演以来各地で好評を博す「高麗3神仏の舞」で開いた。鐘の音で始まる荘厳な音楽、舞台背景に描かれた仏教美術の華麗さと舞姫たちの静謐な舞が、圧倒的な感銘を呼び覚まし、「すごい、ステキね」というささやきがさざなみのように客席に広がっていった。終演の「アリランメドレー」まで息もつかせぬ舞台に観客は最後まで釘付けになっていた。 日朝のかけ橋、活躍を
公演を観た辻久男・自民党秋田県議は「華やかで優雅で幻想的、しかもリズミカルでテンポもよくすばらしい舞台だった。輝かしい伝統を誇る朝鮮文化の奥深さを堪能できた。今、両国間には懸案問題があるが、こんな時だからこそ、ますます文化交流を促進させて、平和な東アジアを築いていかねばならない。その積み重ねが、両国の関係改善にはかりしれない前進をもたらすと思う」と秋田公演の成功を心から喜んだ。 また、石川錬治郎・前秋田市長も「公演が市民の支援に支えられて、大成功裏に終えたことをまず喜びたい」と前置きしながら次のように語った。
「これまで歌劇団公演を十数回観たが、今日の公演が一番よかった。形式主義を排し、それぞれのアーティストの個性が引き出された見事な舞台であったと思う。全体の統一美と個性が調和して叙情的で美しかった。今後もより深く芸術性と表現法を磨いて、日朝のかけ橋としてますます活躍してほしい」とエールを送っていた。 また、秋田大学に留学中の南の許晃曾国立ハンバク大学副教授は「朝鮮民族の豊かな芸術性が息づく舞台は秀逸だった。しかも、異国で会得するのは難しいチャンダン(リズム)や舞踊の身体の細かな動きを2〜4世たちが身につけ、自在に演じていることに感嘆した。そのうえ、『高麗3神仏の舞』のように6.15の時代精神を込めた芸術作品を披露したことはすばらしい。祖国の統一が現実だということを痛感させられた舞台だった」と語った。(文=朴日粉記者、写真=文光善記者) (関連記事) 〈金剛山歌劇団秋田公演〉 心温まる金剛山歌劇団秋田公演前夜祭 〈金剛山歌劇団秋田公演〉 金剛山歌劇団の活動に共感、作家・野添憲治さん [朝鮮新報 2006.9.5] |