top_rogo.gif (16396 bytes)

横田めぐみさんの遺骨DNA鑑定問題 経緯と経過 −5−

日朝国交正常化交渉を

 日本政府は共和国政府と誠実に国交正常化交渉をすべきである。

 日朝関係は近年、拉致問題をめぐり鋭く対立している。多くの日本人が拉致問題やミサイル、核問題で理性を失って感情的になってしまい、共和国を非難するばかりで、なぜそのようなことが起こってしまったかという原因、背景について思考せず、問題を解決していこうという姿勢が見られないのは非常に残念なことである。

 日本はかつて自国の野望を満たすために朝鮮半島を侵略し、36年にわたって植民地支配し、土地、財産、氏名、言葉を奪い、抵抗するものは殺し、徴用工や皇軍兵士さらには「従軍慰安婦」として朝鮮人を強制労働、強制連行して戦場を連れ回しながら中国をはじめとするアジアの国ぐにを侵略して2000万の尊い命を奪ったのである。日本国内では、1923年の関東大震災当時、「朝鮮人が放火している」とか「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という流言が広まり、いわゆる朝鮮人狩りが行われ、6000人以上の朝鮮人が虐殺された。敗戦直後、日本には220万あまりの朝鮮人がいたという。そしてこれらの人びとの多くは、日本で差別、偏見、弾圧を受けながら、劣悪な環境の中で暮らしてきたのである。

 敗戦後、日本は米国の極東軍事戦略の中で経済大国への道を歩んだ。一方、朝鮮は国土が分断され、同じ民族どうしが血を流し合った朝鮮戦争では300万以上の人びとが犠牲となり、その後、米軍が軍事支配する韓国と共和国とは鋭い対立が続いた。 

 日本はこのような中で米国に追随して共和国敵視政策を採り、経済制裁、軍事的威嚇を続けてきた。日本人の拉致問題はこのような背景のもとで起こったのである。00年6月15日の南北首脳会談以降、南北は対立、分断から平和、統一の方向に向けて進んでいるが、いまだ朝鮮戦争は「撃ち方止め」の休戦状態のままで、平和協定は結ばれていない。そして南北には合計で1000万人の離散家族が存在すると言われている。

 日本は植民地支配と侵略戦争に対して、今までどれだけ反省し責任をとってきたのであろうか。とくに、日本政府は共和国に対しては戦後60年間、謝罪も賠償もせず放置してきたのである。

 また、現在でもアジアの国ぐにには朝鮮半島の分断をはじめ戦争の傷跡はいたるところに残っており、「従軍慰安婦」、強制労働、銃剣、毒ガスなどで傷つき苦しんでいるアジアの人びとがなんら補償をされずに生きている。これらの人びとに対して日本政府は、米下院の「従軍慰安婦決議」への対応を見れば明らかなように、なんら誠意ある措置をとろうとしない。

 また、日本だけでも炭鉱、建設現場、軍需工場などで強制労働により斃れ放置されたままのおびただしい数の遺骨がある。これらについても日本政府は無視し続けている。共和国は建国以来、さらに遡れば乙巳条約以来100年以上、一時も平和な時代はなかったのである。このような過去の歴史を振り返れば、日本政府こそ戦後速やかに共和国に対して謝罪賠償すべきであったし、戦争責任を放置し、敵視政策を採り続けてきたことが拉致問題を引き起こしたと言うべきであろう。

 さらに、核やミサイルなどの問題、国内における状況なども、南北の分断を固定化させ、共和国敵視政策を採ってきた米国と日本に原因があり、緊張を緩和して東北アジアの平和を模索することこそ大切である。日本政府は『日本政府見解』の総論で次のように述べている。

 「備忘録」は「拉致問題が、日本政府の一貫した反共和国敵視政策とそれによるわが人民の激高した反日感情を背景として生じたということを考慮するとき、日本政府にも問題の責任がある」としている。しかし、拉致こそは、北朝鮮側が無辜の日本人に対して一方的に加えた非人道的行為そのものであり、この問題については専ら北朝鮮側が責めを負うべきであることについては、日朝平壌宣言においても明らかである。

 この見解が一方的で倒錯していることは明白であろう。朝鮮を植民地支配して朝鮮人民に筆舌に尽しがたい苦しみを与え、朝鮮人をアジア侵略戦争に巻き込んでいったこれらの日本の行為こそ一方的に加えた甚大な非人道的行為そのもの≠ナあり、それを放置したままでいる日本政府および日本国民は戦争責任を負っており、決して無辜ではないのである。

 また、60年以上も戦争責任を果たさず忘却の彼方へ追いやろうとする日本政府、および政府を民主主義によって支持してきた日本国民こそ責めを負うべきであることは明らかである。政府やメディアの、自らの過去については一切省みず、拉致、核、ミサイルばかりを非難する姿勢は、加害者が被害者に転落していると言わざるをえない。それとも日本政府は平壌に対して、「日本人の命は地球より重く、朝鮮人の命は枕木一本」、とでも言いたいのであろうか。拉致は決してあってはならないことであるが、以上のような原因、背景を考慮して議論すべきである。

 07年8月、共和国は甚大な水害に見舞われた。米国をはじめとする国際社会が人道支援を行っているのに対して、日本政府は共和国と在日朝鮮人の弾圧に血道を上げ、共和国の水害の支援を一切行わないだけでなく、朝鮮総連の共和国人道支援のための船舶の運行すら許可しないという。このような行為は、日本人の人権感覚を国際的に問われかねないであろう。また、日本政府は対共和国政策に『対話と圧力』で臨むというが、『圧力』は強国が弱国に一方的に加える態度であり、戦争責任から目を背ける態度であり、対等な立場での交渉を拒む態度であり、問題解決には決してならない。

 敵視政策を止め、誠意ある態度で臨んで国交正常化を行ってこそ拉致問題も解決されるのである。また、日本政府と日本国民は、過去の植民地支配の被害者およびその子孫である在日朝鮮人に対する政治的弾圧や差別、人権蹂躙を直ちに止め、在日朝鮮人が自由で人間的な生活ができるように努めなければならない。(おわり)

横田めぐみさんの遺骨DNA鑑定問題 経緯と経過 −4−

横田めぐみさんの遺骨DNA鑑定問題 経緯と経過 −3−

横田めぐみさんの遺骨DNA鑑定問題 経緯と経過 −2−

横田めぐみさんの遺骨DNA鑑定問題 経緯と経過 −1−

[朝鮮新報 2007.12.19]