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〈羅先紀行 朝鮮経済復興の鼓動 -下-〉 運輸手段の整備、線路補修

鉄道網の現代化に全力

 【平壌発=李相英記者】今回の羅先取材のため、初めて朝鮮の鉄道を利用した。平壌−羅先間の列車紀行は朝鮮の鉄道事情を肌で感じる機会になった。

最大限に活用

着工式の参加者らを乗せた特別列車(羅先駅で筆者撮影)

 10月2日午後3時、豆満江行きの8両編成の特別列車は定時に平壌駅を出発した。

 駐朝各国大使館員と朝鮮外務省、鉄道省関係者らを乗せた列車は、羅津−ハッサン区間鉄道と羅津港の現代化事業の着工式が行われる朝ロの国境駅に向けて北へと走る。26時間の長旅だ。

 客室内にはコンパートメント式の寝台スペースが並ぶ。ベッドは1室あたり上下で計4台。「ルームメイト」は中国・新華社通信と人民日報の駐朝特派記者だった。

 食堂は先頭と最後尾の2両にあり、外国人と国内関係者用に別れていた。先頭の外国人用食堂は1食5ユーロで、料理の種類も豊富、味もなかなかだ。豪華列車ではないが、寝台スペースなどを別にすれば車内環境は決して悪くない。

 客車を牽引する機関車には朝鮮でポピュラーな電気機関車ではなく、ディーゼル機関車の「内燃602」号が使用された。

 平壌を後にした列車は成川、陽徳など平安南道の内陸部をゆったりしたスピードで走る。首都を抜けると車窓越しの景色は一変した。

 秋の夕日が田舎の風景を赤く染める。

 朝鮮では、平壌−新義州や平壌−羅津区間を幹線にして解放後、全国各地に鉄道網が構築された。北部鉄道など両江道の高山地帯にも線路が通った。同時に鉄道の電化も進み、現在ではほとんどの区間が電化されている。

 全国各地にヒト、モノを運び経済発展に寄与してきた鉄道も、時の経過とともに老朽化が進んだ。

 今回の旅で出会った鉄道部門の関係者らは、強盛大国建設に利する方向で鉄道インフラを現代化し最大限に活用する必要性を一致して指摘していた。

「輸送実績伸びた」

 経済発展において輸送部門が果たす役割は大きい。とくに、山地の多い朝鮮では大量輸送と規則的輸送を可能にする鉄道は他の輸送手段に比べて高い意義を付与されている。全国に張りめぐらされた鉄道網はしばしば国家の「動脈」に例えられる。

 近年、工場や企業所での生産活動が活発になるにつれて、「人民経済の先行部門」の一つである鉄道輸送部門の重要性は一段と高まっている。生産現場に送る各種の物資や原材料、石炭や鉄鋼材をはじめとする燃料、建設資材など輸送の内容は多岐にわたる。今年元旦の3紙共同社説も鉄道部門について、「増加する輸送の需要を満たすこと」を目標に掲げ、そのための課題として運輸手段の整備・補強などを挙げた。

 列車に同乗した鉄道省の関係者は、具体的な数字は明らかにしなかったが、「昨年に比べて鉄道貨物輸送の実績は大幅に伸びた」と話す。とくに重視されているのがセメントや銑鉄、圧延鋼材などの建設資材と火力発電所への石炭の輸送だという。実際、羅先に向かう途中の駅では物資を満載した貨車が出発を待つ光景が数多く見受けられた。

さまざまな取り組み

 平壌を出発した豆満江行きの列車は目的地へ向けて内陸部をひた走る。着工式に参加する関係者のための特別列車なので乗降客はいないが、ノンストップというわけではない。車両点検や時間調整のため、数時間おきに駅に停車する。夜半過ぎ、列車は分岐駅の高原駅(咸鏡南道)に到着した。路線はここから咸興と元山方面に分かれる。高原駅を出発した特別列車は翌日の昼に咸興、端川、金策、清津など朝鮮屈指の工業地帯を進んだ。

 「経済発展は物資と生産現場を結ぶ鉄道輸送にかかっている。運輸手段の整備と線路の補修が当面、急務だ」。車窓越しに広がる工場の景色をながめていた前述の鉄道省関係者はこう強調した。

 運輸手段の整備に関しては、機関車をはじめとする車両の性能向上に重点を置いているという。東海岸沿いを走る列車の速度は平地でもそれほど上がらない。走行中の揺れも激しい。振動制御技術など車両の性能は「先進国に比べてまだまだ劣っている」と関係者は指摘する。

 国内では数年前から新型の機関車開発が専門工場や研究機関で進められている。機関車走行中の電力ロスを減らし牽引力を強めるための研究もさまざまな方面で行われている。

 一方、鉄道省傘下にある各地域の鉄道局では、9月に延べ400キロにわたる区間の線路の補修を行ったという。レールや路盤の補強、枕木の交換などが主な内容だ。現在は、平安南道の北倉、徳川地区の線路補修が行われている。本線のみならず支線も含めた大々的な補修計画だという。数多くの炭鉱が集中し、大規模の火力発電所もある同地区での鉄道整備事業は、石炭と電力部門のさらなる活性化につながるものとして期待を集めている。

 「鉄道の現代化は一朝一夕には不可能だが、長期的展望に立って着実に進めている」と話す鉄道マンの表情に力強さを感じた。

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[朝鮮新報 2008.11.28]