〈第87回全国高校ラグビー〉 気概示した大阪朝高ラガーマン |
「第87回全国高等学校ラグビーフットボール大会」ベスト8を前に涙した大阪朝鮮高級学校ラグビー部。選手らとその父母、大阪の民族教育を支援する日本の人々の声をまとめた。 固まった基盤
「在日社会を取り巻く状況は厳しく、朝鮮学校に通う生徒数も年々減少している。しかし朝鮮人であり在日3、4世の自分たちが全国大会で活躍することで、いろんな人たちに感動と勇気を与えたい」−3回戦の東福岡戦で意地のトライを決めるなど、チームを引っ張ってきた趙顕大主将(高3)は、全国大会を前にこう話していた。 3年ぶりの全国大会出場ということもあり、短期間であったにもかかわらず応援協力金が多く集まったという。地元だけでなく、遠方の同胞などさまざまな支援者から寄せられた。
大阪朝高ラグビー部父母会オモニ会長の金恩舜さん(48、白哲和選手の母)は、「感謝の気持ちでいっぱい。応援の数も年々多くなっている」と身にしみて感じたという。 全国大会常連校としての同高の基盤が、着実に固まってきていると父母会アボジ会長の趙福来さん(48、趙顕大主将の父)は見ている。その理由のひとつとして東大阪朝鮮中級学校ラグビー部の活躍を挙げた。 また、大阪朝高の土地問題と関連し、その運動場で部活をする選手らが、権利を守ろうと試合に臨んだことについても、「裁判結果はまだ出ていないが、(全国大会出場は)内外の世論を喚起し支持を得るうえで、大きな意味があった」と語った。 小波を大波に
「東大阪市は大阪朝鮮高級学校の運動場を奪うな!」−こう書かれた東大阪市長あてのビラが近鉄花園ラグビー場外周辺で配られ、日本の人々が署名活動をしていた。 昨年1月31日、東大阪市は「土地区画整理事業」を口実に大阪朝高に対し、運動場の4分の1に当たる土地の明け渡しを求め提訴した。署名は、その要求を直ちに撤回し訴訟を取り下げ、「多民族共生社会」をめざす東大阪市の誇りとして全国に名を馳せる大阪朝高に財政支援することを求めている。 寒空の中、試合開始2時間前からビラを配り試合も観戦した「大阪朝鮮高級学校のグラウンドを奪うな!」日本人側署名運動実行委員会(「ハナから〜日朝友好プロジェクト」「1%の底力で朝鮮学校の民族教育を支援する会」「平和の糧」「北大阪朝鮮初中級学校を支える会」「中大阪朝鮮初級学校と共に歩む会」「西大阪朝鮮初級学校アプロハムケ」「生野チョソンハッキョを楽しく支える会」「笹島日雇労働組合」)の関係者たち。
署名は大阪朝高が3試合(1〜3回戦)を終えるまでに1200余人集まったという。富田穀・「中大阪朝鮮初級学校と共に歩む会」共同代表は、「今後も(土地問題の)解決に向け尽力したい」と話していた。 多くのビラが全国のラガーマン、観客の目に留まった。日本の人々の中に「小波」を起こし、それを「大波」にしようとしたのは同胞社会を支援してくれる日本の人々であった。大阪朝高の選手らの目にも、彼らの姿はしっかりと焼きついている。 全試合が終わった1日夜、選手の父母らは選手らを招いて食事会を催した。その席で趙顕大主将は「今日が新しいスタート」だと強調した。日本一を目指す大阪朝高の勇姿を、周囲のさまざまな人々が期待の眼差しで見守っている。(文=李東浩記者、写真=盧琴順記者) [朝鮮新報 2008.1.9] |