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〈朝・日実務会談〉 大勢合流に向けた環境醸成

窮地に陥った日本の「対朝鮮アプローチ」

 【北京発=金志永記者】朝・日政府間実務会談が11、12の両日、中国・北京にある両国大使館で行われた。朝・日間で公式会談が開かれるのは昨年9月以来、約9カ月ぶり。会談の結果、朝鮮側は拉致問題の再調査を実施し、「よど号」関係者問題の解決のために協力することで合意、日本側は▼人的往来の規制解除▼チャーター飛行機便の規制解除▼人道支援関連物資輸送目的の朝鮮国籍船舶の入港許可など対朝鮮制裁措置を部分的に解除することにした。会談は「平壌宣言に沿って不幸な過去を清算して懸案問題を解決するために双方の関心事を協議」(朝鮮外務省関係者)するという事前合意に基づいて開催された。膠着状態に陥っていた朝・日関係を念頭に置き、平壌宣言を履行するうえで提起される「双方の関心事項」に議論の焦点を合わせた。

 朝・日実務会談の結果は、「よど号」関係者の帰国問題や拉致問題の再調査を含め、朝鮮が過去に言及したか、もしくは立場を表明したことのある問題が反映されたものだ。しかし、日本にとっては現時点で朝鮮との合意がなされた意味は大きい。国際情勢の流れに逆行して対朝鮮対決路線を追求してきた日本の外交的孤立感はもはや限界に達している。今回の会談は日本にとって、局面打開が可能となる「目に見える成果」がかつてないほど切実に求められた協議だった。

9カ月の停滞期間

 昨年9月、モンゴルのウランバートルで行われた国交正常化作業部会で双方は、両国関係を進展させるための新たな枠組み作りを試みた。

 当時は、朝米間の懸案だった「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」問題が解決し、2.13合意による非核化の「初期段階」措置の履行と並行して6者会談参加国の間で「第2段階」の構想が議論されていた時期だった。

 ウランバートルで朝・日双方は、平壌宣言に基づく国交正常化の早期実現のために具体的な行動措置を協議していくことで意見の一致を見た。

 ところが会談直後、安倍首相の突然の辞任劇によって政局は混乱、福田政権が誕生したが、ウランバートル合意の履行は保留状態に置かれた。

 直後の6者会談では非核化に向けた「第2段階」措置が明示された10.3合意が採択されたが、日本は朝鮮との関係進展はおろか「制裁」措置の延長を決めるなど圧力外交に固執する旧態を見せた。また、核申告問題に関連した10.3合意履行の遅れに乗じて、日本国内でも朝鮮との関係進展を好ましく思わない勢力の声が大きくなり、対朝鮮外交の推進力は失われていった。

 しかし今年4月以降、10.3合意履行の完結に向けた朝米両国の歩みは再び加速度を増した。日本の強い反対にも関わらず、米国が朝鮮を「テロ支援国家」リストから削除することは、もはや否定できない現実となった。

置き去りの同盟国

 朝米間の協議が6者会談の行方を左右し、東北アジア情勢に影響を及ぼしている。米国が、いくら同盟国といえ、その本心を日本にありのまま伝えることはないというのが外交筋の一般的な見解だ。

 5月末、北京で6者会談朝鮮側団長である金桂官外務次官と会ったクリストファー・ヒル米国務次官補は、朝鮮側に「日朝関係進展の重要性」について強調したと再三アピールしたが、これも日本の主張と立場を擁護したというより、メディアを通じた外交辞令の性格が色濃い。今回の会談が実現した過程には、外交的な立場が弱まった日本側の意向が大きく作用したことは想像するに難くない。「朝鮮側が米国との交渉過程で、対日関係を解決しなければ『テロ支援国家』指定解除など、これ以上の見返りを期待できないとみて日本との会談のテーブルについた」という見方は、日本が置かれた厳しい立場を無視する我田引水にすぎない。

 朝鮮在住の「よど号」関係者の帰国は以前にも双方の間で議論されたことのある問題だが、10.3合意履行の最終局面で出てきたことは注目すべき動きだ。

 6者会談の合意を何一つ履行しなかった日本が、多国間外交の枠組みの中で果たした役割といえば、事態の進展にブレーキをかけたことだけだった。「テロ支援国家」指定解除を拉致問題と無理やり結びつけ米国の行動を妨げようとしたが、「確固たる日米同盟の証明」だと執拗に提起し続けた主張が崩れてしまえば、もはやなす術はない。国内世論に向けて日本が多国間外交に今後も関与しなければならないと説得することも難しくなるだろう。

平壌宣言履行へ進むべき

 10.3合意が履行された後、日本が置き去りにされないためには、国際社会の大きな流れに沿う条件を整えていかなければならない。失われた9カ月の停滞を取り戻さなければならないという日本側の焦りは今回の会談の現場でも感じられた。朝・日会談には日本側からも国交正常化問題を担当する大使が派遣されるのが慣例だが、今回の会談には6者会談首席代表である斎木昭隆・外務省アジア大洋州局長が直接出向いた。

 一方、朝鮮側は今回の会談でも朝・日関係改善に関する原則を堅持した。宋日昊・外務省朝・日国交正常化会談担当大使を含む代表らは、日本側の路線転換に対する覚悟と準備の程度を見極めて適切に対応するという冷静な立場だった。

 日本では「よど号」関係者の帰国のような事態の進展に注目が集まりがちだが、今回の会談で双方が議論した問題の本質は、朝・日双方が追求すべき正しい外交目標の設定だ。共同の課題を定めて持続的に対話をすれば、未解決の問題も解決が可能だ。

 日本には拉致問題と関連した硬直した世論があり、今回の会談の成果をアピールして政府による対朝鮮外交の足場を固めることは、日本側の課題として残されている。もし今回の合意を、朝米関係の急進展という「衝撃」を緩和させるための急場しのぎの策として利用するにとどめるならば、日本は再び外交的窮地に陥るだろう。

 日本がとるべき現実的な選択は平壌宣言に立脚することだ。宣言に基づく過去の清算と懸案問題解決に外交目標を定めること以外に日本の進むべき道はない。

 朝鮮と日本は6者会談の開催に先立って平壌宣言を採択した隣国同士だ。朝鮮側関係者は、両国間には解決すべき固有の問題があり、そのための宣言もあると常に言い続けてきた。日本は、朝鮮側のこのような前向きの姿勢が今回の合意に至る過程においても貫徹されたことを看過すべきではない。

実質的な関係進展のカギ 試される福田首相のリーダーシップ

拉致問題 強引な主張で決裂の前例も

赤軍派帰国問題 「『よど号』は日本の内部問題」

[朝鮮新報 2008.6.18]