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〈金剛山歌劇団ソウル公演〉 対談 功勲俳優の康秀奈さんと朴泉美さん

命の輝き放つ「北の名舞」

 昨年暮れの金剛山歌劇団のソウル公演(12月22〜24日)は、ソウル市民はもとより古典、現代舞踊家はじめ専門家たちから高く評価された。ソウルで舞台を終えたばかりの同歌劇団舞踊部長の功勲俳優・康秀奈さんと功勲俳優・朴泉美さんに話してもらった。(司会、整理=朴日粉記者)

−金剛山歌劇団のソウル公演は00年、05、06年についで4回目、舞踊だけの公演は初めてだった。

ソウル公演について語る康秀奈さん(左)と朴泉美さん

 康 演目ごとに温かい拍手やため息のような音、「ウォー」という声が寄せられ、客席のすごい期待感や熱気が伝わってきて、踊っていて思わずゾクゾクしてきた。

 朴 ことばを交わさなくてもわかり合える感性、舞台も観客も一体感を味わえる舞踊家としての至福を味わうことができた。舞台終了後、多くの観客が帰らずサインを求めて行列を作っている姿を見て、「ヤッター」と思った。

 康 「高麗三神仏の舞」を観た仏教関係者らがとても感動してくれて、また、ソウルでの公演を招聘してくれた。こんなに大きな反響を得られてとても満足している。

−今回のソウル公演の特徴は?

 康 第1部は、北の名作を披露した。1950年代から現代にいたるまで北で創作され、演じられた珠玉の作品ばかり。これらの作品は、植民地支配や朝鮮戦争の受難に打ち勝ち、廃墟の中から不死鳥のように立ち上がった朝鮮の民衆の気概と祖国への愛を込めたものが主だ。

 朴 群舞「りんごの豊作」や独舞「太鼓の舞」などもそうだ。戦後の復興をなしとげる千里馬時代の暮らしを舞踊化したもので、厳しい時代を潜り抜けた後の明るさや喜びが、観る者の心にも伝わったと思う。

−不世出の舞踊家崔承喜や娘の安聖姫の名作も披露された。

南の古典芸術の殿堂・国立国楽院礼楽堂には特大の垂れ幕が掲げられた

 康 群舞「扇の舞」や「チェンガンの舞」など、日本でもおなじみの演目ばかり。

 崔承喜は圧制に打ちひしがれていた異国での暮らしの中で、在日同胞に踊りを通して生きる希望と勇気を与えた芸術を創作した。その時の舞台は、国境や民族を越えて人々の脳裏に記憶され、衰えを知らない命の輝きを放っている。その舞踊をソウルでも見せることができたことはうれしい。

 とくに「扇の舞」は朝鮮戦争の最中に創作され、84年に崔承喜の弟子で創作家の白煥栄によって受け継がれ完成された息の長い作品。優雅で品格のある名作として、世界の舞台でも高く評価されてきた。

 朴 群舞「チェンガンの舞」は、73年に万寿台芸術団によって、日本でも披露され、大変な人気を博したと聞いている。安聖姫の作った傑作だといわれている。「チェンガン」というのは、朝鮮王朝時代、もともとは豊作を祈願する巫女が厄払い用に使った鈴のような小道具。今公演でも、そのスピィーディーな踊りと華麗な衣装に注目が集まり、大変な人気だった。

−第2部は、康さんが創作し、06年の金剛山歌劇団日本公演で初演された民俗舞踊「高麗三神仏の舞」など、在日の舞踊家が創作したもので構成された。

 康 04年に北南、日本の関係者らの尽力で復元された開城の名刹・霊通寺のことを朝鮮新報で知った。そこに五冠山の懐深くに抱かれた寺と発掘された美しい仏画の写真が載っていた。あまりの感動にしばらく全身が震え、胸が高鳴るのを止めることができなかった。

 高麗時代、東アジア随一と言われ、日本の天台宗にも経典を授けたといわれる名僧義天によって創建された霊通寺。その香り高い文化が、関係国の人々の手によって蘇った深い因縁に心打たれ、これを絶対に舞踊化しなければと誓った。

−朝鮮新報記者としては、うれしい秘話です。作品が完成するまでには紆余曲折があったと思うが…。

独舞「トラジ」を熱演する康秀奈さん

 康 祖国の専門家たちの協力が忘れられない。写真と手紙のやりとりをしながら、幻想的な美しい曲を作ってもらった。そして、舞台の後ろに掲げる仏画もすばらしい芸術作品を制作して送ってくれた。

 金日成主席と金正日総書記は金剛山歌劇団にいつも深い愛情を注いでこられたが、それは作品のあらゆるディティール、舞台美術の隅々にいたるまで北の専門家たちが惜しみない協力を寄せてくれたことに表れている。

 さらに、06年のソウル公演の際に大河ドラマ「不滅の李舜臣」を手がけた衣裳担当の専門家と知り合い、舞踊家たちの衣裳に全面的な協力をしてもらった。質感といい、美しさといい最高の仕上がりとなった。この舞台の完成までの道のりを見ても、北南の協力と統一への過程を示していると思う。

群舞「チャンゴの舞」に大きな拍手が送られた

 朴 独舞「愛するチマ・チョゴリ」について言えば、在日同胞学生たちが日本における民族差別や弾圧に決して屈せず、堂々と胸を張って生きていることをリアルに描いている。今回のソウルの舞台でも、目頭を押さえ、嗚咽する観客が多く、とても感動した。こんなに励まされたことはなかった。

 拉致事件が明るみになった後、日本での地方公演の際に、右翼から罵声を浴びたことも一度や二度じゃない。四国での公演では、客席から爆竹を鳴らされる嫌がらせを受けたこともある。そのたびに私たちは歯を食いしばって、「もっとすばらしい舞台を」とみなが力を合わせてがんばってきた。というより「逆境に強い朝鮮人の血」を再確認していた。

−半世紀の分断の苦痛の中から在日同胞が守り通したものが、舞台に凝縮されている。

公演終了後、舞台裏で国会議員の姜恵淑さんからねぎらいの言葉をかけられた康さんと朴さん

 康 そうです。若い世代の舞踊家たちも、祖父母、父母、同胞たちの歩んだ道のりから多くのものを受け取っている。民族教育はじめ人間としての尊厳を守る闘いの中で得た民族の心、勇気、そして統一への希望…。それらを舞台で演じることは並大抵なことではないが、ソウル公演が絶賛を浴びたのは、舞台もさることながら、祖国を信じてひたすら歩んできた在日同胞たちへの惜しみない拍手だったのだと思う。

 朴 そんな同胞たちの深い愛情の中で、若い団員らは自らを日々鍛えている。夜遅くまでの練習に耐え、土日のアルバイト…。それは、民族芸術を異国で受け継いでいくという強い誇りに支えられている。

 それらは決して目に見えるものではないが、ソウルの観客たちの大きな拍手の裏には、人知れぬそんな努力への賞賛があったのかもしれないと思っている。

〈金剛山歌劇団ソウル公演〉 伝統の継承、民族教育に強い共感 南各界の声

〈金剛山歌劇団ソウル公演〉 奉恩寺の明真住職が歓迎

〈金剛山歌劇団ソウル公演〉 プログラム・解説

金剛山歌劇団公演 絶賛のソウル市民

[朝鮮新報 2008.1.9]