４ラウンド、洪のパンチを受け、崩れ落ちたチョ	洪は狙いすました右で、チョを着実に追い込んだ	新王者誕生に沸く同胞応援団

　　　　　　　

 　WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ（１２R)が２７日、大阪府立体育会館（難波）で行われ、同チャンピオンのチョ・インジュ（韓国）と同級４位の洪昌守（金沢ジム、リングネーム徳山昌守）が対戦。洪が判定でチョを下し、新王者となった。

 

　「プロボクシング初の南北朝鮮対決」「在日朝鮮人初の世界王者誕生なるか」――南北朝鮮の国歌に代わる「ウリエ　ソウォヌン　トンイル（我らの願いは統一）」の斉唱に続き、注目の一戦の幕は切って落とされた。

 

　前評判では、すでに５度防衛しているチョが優勢と見る向きが大勢を占めた。前日の記者会見でも王者は余裕をみせ、各紙もその様を伝えた。

 

　両者はともに技巧派のアウトボクサー。世界戦のキャリアで上回るチョを攻略するには、洪は打ち合いに持ち込むべしとする論調が強く、洪からもそれを匂わせる発言は聞かれた。

 

　王者の胸を借り、がむしゃらに前に出る挑戦者――しかし、実際の試合は、これとはまったく様相を異にした。

 

　第１ラウンド、洪のいささか大ぶりのパンチを、王者は笑みにさえ見える余裕の表情でかわす。一方の洪には、いささか硬さがあるようにも思われた。ところが、次のラウンドで早くも、洪のパンチが王者の右目上部分を切り裂いた。洪は王者の右を充分に警戒し、懐に入ろうと低い姿勢で接近してくるところを左でけん制、右で反撃した。

 

　３ラウンドでは、チョの顔からは完全に余裕が消え、逆に洪は冷静さと集中力の度合いを深めた。そして第４ラウンド、ついに王者がダウンを喫すると、会場は興奮につつまれ、洪の勝利に対する期待はいやがうえにも高まった。

 

　歴戦の勇士らしく、ダウンから立ち直り、洪の猛攻をしのいだチョだが、その後も洪が放つ狙いすました右ブローを受けつづけ、終盤には出血が止まらなくなった。結局、最終ラウンドまで両者ともに引かずに打ち合い、試合終了。判定は３−０で、洪の圧勝となった。

 

　念願のチャンピオンベルトを巻いた洪は、大声援を送りつづけた同胞応援団に向け、「チャンピオンは強かったけど、チャンスをものに出来た。ここまで来れたのは皆のおかげ」と感謝の言葉を送り、最後は「チョソヌン　ハナダ（朝鮮はひとつ）」のシュプレヒコールで締めくくった。